「宮部みゆき」の長篇時代小説
『桜ほうさら』を読みました。
『震える岩 霊験お初捕物控』、
『天狗風 霊験お初捕物控【二】』、
『あやし』、
『ぼんくら』、
『日暮らし』、
『おまえさん』、
『お文の影』に続き、
「宮部みゆき」作品です。
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〈上〉
人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる、
「宮部」時代小説の真骨頂!
父の無念を晴らしたい――そんな思いを胸に、上総国から江戸へ出てきた
「古橋笙之介」は、深川の富勘長屋に住むことに。
母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の
「治兵衛」や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと気にかけ、手を差し伸べてくれる。
家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、
「笙之介」は
「桜の精」のような少女
「和香」と出逢い…。
しみじみとした人情にほだされる、ミヤベワールド全開の時代小説。
タイトルの
『桜ほうさら』は、甲州や南信州の
「ささらほうさら」(いろいろなことがあって大変という意味)という言葉に桜をからめた言葉。
桜の季節に始まる心温まる物語。
〈下〉
拐かし、偽文書、家族の闇…ドラマの原作にもなった傑作時代ミステリー。
上総国搗根藩から江戸へ出てきて、父の死の真相を探り続ける
「古橋笙之介」は、三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。
「桜の精」のような少女
「和香」の協力もあり、事件を解決するのだが。
ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた
「笙之介」。
絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。
真相を知った
「笙之介」に魔の手が…。
心身ともに傷ついた
「笙之介」は、どのような道を選ぶのか。
御家騒動を描いた武家物でありながら家族小説、青春小説でもある、
「宮部みゆき」の新境地!
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再び長篇です… 時代小説なのですが、ミステリであり、家族小説・青春小説の側面もあり、愉しめましたね。
■第一話 富勘長屋(とみかんながや)
■第二話 三八野愛郷録(みやのあいごうろく)
■第三話 拐かし(かどわかし)
■第四話 桜ほうさら
■解説 ときには残酷に、でも眼差しはあたたかく 青木逸美
舞台は江戸深川、主人公は、上総国搗根藩(かずさのくにとうがねはん)で小納戸役(こなんどやく)を仰せつかる
「古橋家」の次男坊で22歳の
「古橋笙之介」… 温和で実直な好人物だった父
「宗左右衛門」が賄賂を受け取ったという汚名を着せられて自刃、、、
兄
「勝之介」は蟄居の身となり、
「笙之介」は江戸留守居役(えどるすいやく)
「坂崎重秀」の密命を受け真相を追うために江戸へやって来た… 気が弱くて剣もからきしのうらなり瓢箪で金がなくて風采もあがらない
「笙之介」だが、父の汚名を雪ぎたい、という思いを胸に秘め、深川の富勘長屋に住み、書の才を活かし写本の仕事で生計をたてながら事件の真相究明にあたる。
父はなぜ賄賂の嫌疑をかけられたのか… 父の手跡を真似て偽文書を作った代書屋の存在が浮かび上がる、、、
代書屋を探し出せば、父の汚名を雪げるに違いない…
「笙之介」は奮起するが、何をどうすればよいかわからない、何とも頼りない敵捜しが始まった。
悍馬と風評されるほど気の強い母
「里江」から疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍
「笙之介」に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の
「村田屋治兵衛」や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる… 家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、
「笙之介」は
「桜の精」のような少女
「和香」と出逢い、次第に心を通わせ合うようになる
肩口で髪を切りそろえられた切り髪が印象的で、前髪から覗いた愛らしいおでこに
「笙之介」は恋をした… 一分咲きの桜に似て慎ましく、寂しげなひと、、、
しかし、
「和香」はおとなしやかに見えて、とんでもない跳ねっ返りだった… ようやく出会った二人はいきなりぶつかり合う、
「和香」はその身に秘密を抱えており、それゆえ素直になれず、意固地になって突っ張って憎まれ口をたたいてしまう。
そんな中、父の死の真相を探り続ける
「笙之介」は
「三河屋」での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる…
「笙之介」は
「和香」の協力も得て事件を解決、、、
そして、遂に父を陥れた偽文書作りの犯人に辿り着く… 絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。
父の死の真相を知ったとき、
「笙之介」は深い闇に呑み込まれていく…
「真実」を突き付けられた
「笙之介」が選んだ道とは、、、
真実は人を幸せにするとは限らないんですよねぇ… 切なくも温かい物語でしたね。
心も身体も傷だらけになった
「笙之介」を救ったのは、長屋の住人たちと
「和香」の存在でしたね、、、
真相が判明して、物語が終息する終盤は一気読み… 面白かったなぁ。
あと、時々挿入される
「三木謙次」のほのぼのしたイラストも印象的でしたね。
以下、主な登場人物です。
「古橋笙之介(しょうのすけ)」
江戸深川の富勘長屋に住み、写本で生計を立てている浪人もの。
「和香(わか)」
仕立屋・和田屋の娘。笙之介とは不思議な縁で関わりを深めていく。
「東谷(とうこく)」
本名・坂崎重秀。搗根藩江戸留守居役。笙之介の後ろ盾。
「村田屋治兵衛(むらたやじへえ)」
貸本屋。笙之介に仕事をくれる人物。炭団眉毛が特徴。
「勝之介」
笙之介の兄。剣の腕が立つ野心家だが、父の自刃をうけて蟄居。
「古橋宗左右衛門」
笙之介の父。御家騒動に巻き込まれ、あらぬ疑いをかけられて自刃。
「佐伯嘉門之助」
藩校・月祥館の老師。笙之介を書生として預かる。
「梨枝」
船宿・川扇の女将。東谷の想いびと。江戸における母のような存在。
「武部権左衛門」
手習所の師匠。
「六助」
筆墨硯問屋の手代。笙之介の長屋によく顔を出す。
<富勘長屋の住人>
「太一」
子供たちの大将格。笙之介のことを何くれとなく気遣う。
「おきん」
太一の姉。笙之介に惚れている。
「お秀」
古着の繕い、洗い張りの仕事で一人娘のおかよを育てている。

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