100,000年後の安全
http://www.uplink.co.jp/100000/
渋谷のアップリンクで7月15日まではやっている。
フィンランドのオルキルオトに世界で最初の放射性廃棄物の処分場がつくられている。
永久地層の岩盤に500mもの深さのトンネルをはりめぐらし、そこに廃棄物を埋める。
満杯になれば入口を封鎖し、土で埋め戻す。
これを10万年もたせるという。
なんとも冗談とも夢ともつかない話だが、このプロジェクトはすでに動き出しており、これに関する法律も制定済みである。
これまでにみたどのドキュメンタリー映画とも異なり、映像は美しく、とても詩的である。
しかしそこで見せられる事実はとても重い。哲学的ともいえるようなもの。
地震もない津波もないフィンランドでも選ばれたのは18億年の歴史を持つ岩盤。
地震国日本では、そもそもこの方法は採用できないのだ。
廃棄物を埋めた場所には二度と入ってはいけない、後世の人類が掘り返してはいけないのだ。
それをどうやって保証するのか、じつは100%確実な方法はない。
10万年後の人類の知的レベルは?
言語体系は?
放射性廃棄物とは何であるかしっているか?
今から10万年前はネアンデルタール人の世界だった。現人類とは異なっている彼らとコミュニケートするのはとてもむずかしい。
その場所を掘ってはいけないとどうやったら伝えられるのか?
なぜ10万年なのか?
それは様々な放射線強度がが無害といわれる値までに下がるまでの時間。
われわれの動かしてしまった原発のつけを、後世にまわさないためには、きちっと処分して10万年無害化しておかなければいけないのだ。現在地球上に25万トンの廃棄物があるという。
よしんばフィンランドでうまくいったとしても、日本はどうするのだ・・。
この映画を見れば、原発をつくっていけないことがよくわかる。
こんなものに手を染めてはいけないのだ。
しかし、よしんば今すぐ世界中の原発をとめたとしてしても、もうできてしまっている放射性廃棄物をどうすればいいのか?
反原発であろうと原発推進であろうと、今の我々はなんとか処分する方法を見つけなければいけない。
「そのうちなんとかなるだろう、いい方法がみつかるだろう」、こういう無責任なやり方で原発をつくってきたのが電力会社と政府・経済産業省。
言葉がない・・。
ドキュメンタリーではプロジェクトを推進しているオンカロ社と関連行政部門の人々にインタビューをおこなっている。
彼らはとても正直に問題点と対処法を応えているが、わからないものはわからないと言っている。
そこに廃棄物が埋まっているということを、後の世代にどうつかえていくべきか?
10万年伝える方法があるのか?
むしろわからなくなってしまったほうがいいのではないか?
このことすらはっきりしていない・・。
「あなたは後世の世代の人類は信頼しているか?」「・・・。信頼したい。そう願っている」
さいごにはグッドラック(幸運を)という言葉が出てきた。
そう、運を天に任せるしかないのだ。 とても科学的とはいいがたい。
とにかく、映像は美しいし、淡々とインタビューはおこなわれているが、とてつもなく重い内容のある映画である。
必見。

3