日本文化の心理学と家族療法(またやん心理学)による、皇位継承問題−男系男子継承の意義を説く連載記事が、月刊冊子
カレント(株式会社 潮流社)平成18年3月号より、掲載予定となっています。一部だけ紹介します。
皇位継承問題を考える(T)
〜その民間バージョンとしての
沖縄の女性優位・男系原理に見る思想〜
一、 はじめに
現代の我が国は多くの問題を抱えており、天皇家の皇位継承問題もその重要なひとつの課題である。長年にわたって続いてきた男系男子が皇位を継承する、という原則が、有識者会議によって、変更されようとしているためである。これは男女共同参画に基づく、男女平等、男女対等、ひいては男女同質の理念に基づくもので、男系男子継承がそれにそぐわないためである。
皇位継承問題の最大の難点は、皇位の男系男子継承というものに対し、男女平等・対等・同質の理念に匹敵する、もしくはそれ以上の合理的な有用性が見出せないためである。男女平等・対等・同質の考え方に対置しうるものを提示し得なければ、多くの人が違和感を覚えながらも、この問題は有識者会議が提案する方向にまとまってしまう可能性がある。
男系男子継承の問題は、ひとつの日本文化である。この日本文化は、現代の沖縄にあって、民間に広く普及したものであることは全国的には全く知られていないと言って良いだろう。沖縄では、祖先の位牌祭祀の継承において、徹底して男系男子が原則であり、それは皇位継承と酷似していることが特徴なのである。このことは、民俗学者・柳田国男の文化辺縁説の一例となるのではないだろうか。
筆者は、四半世紀にわたって、この問題の精神分析的な研究を行ってきた。その結果、皇位や位牌継承問題は、現代日本文化の基層を成すと考えられる祖先崇拝文化において、女性優位・男系原理に基づく、子々孫々の繁栄と和合を目的とするきわめて合理的なものであることが知れている。
内閣府・男女共同参画局が主導する男女平等・対等・同質の考え方は、いわゆるフェミニズムに基づくものである。西洋の個人主義に基づくものだ。これを便宜上、西洋フェミニズムと呼ぼう。その特徴は、女は男に抑圧されている存在であるという基本認識に基づくものだ。これに対して、日本フェミニズムと呼べる考え方があるのはほとんど知られていない。それは「婦道」と呼ばれるものである。祖先崇拝文化に基づく、子々孫々の繁栄と和合を目的とする、実践体系である。
すると、現在の皇位継承問題で有識者会議が提唱しているものは、西洋の文化の視点からのものであることが分かる。日本の国態にかかわる問題は、当然、日本の文化に照らし合わせて考えて良いだろう。その日本文化が、これまで多くの識者に認識されていなかったことが問題であろう。以下、日本文化が西洋文化に対置しうるものであることを示しつつ、男系男子継承が子々孫々の反映と和合を目的とする優れた方法論であることを示していく。

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