歌う人にとって、歌詞を理解する事は とても大切だと思う。
そして、その「理解」と言う所が本当に難しい問題。
到達点をどこに置くのか?
それが問題。
先日 ボーカル仲間から聞きました。
「Black coffee」と言う歌詞の事。
英語の発音を習いにいって来て、それと同時に歌詞の意味を深く教えてもらったという話です。
この歌は 女の人の歌です。
浮っついた心で愛を求めて出て行っちゃう男を家で待ってて
心がドロドロになっている女性の歌です。
眠れなくて 彼を待って 一人ウロウロ歩き回る。
時計を見る、1時から4時までまだ一睡もできない。
ブラックコーヒーを飲み 煙草を吸う。。。。。と まあ内容だけ書くと暗い歌なのです。
この中で男を待つ女の事をこう書いています。
「And stay at home and tend her oven・・・」
友達は教えてくれました。
「tend her oven」は 家事全般と子育てもしている意味が有ると。
それをするのが女で、なのに男は外へ愛を求めて出て行っちゃう訳ですね。
そりゃあ、暗くドロドロしちゃいますよね。
へ〜、そう言う意味だったんだ。
そう言う所までは 日本人には中々分からないなあ。
・・・・と思いつつ、その部分を分かる必要については余りこだわらなくても良いんじゃないかと思いました。
歌詞は 詩です。
一語一語もとても大切だけれど、それ以上に その歌が全体として伝えようとしている事の 一番奥の所に到達しようとする努力が大切だと思うのです。
ひょっとすると それは 作詞家の意図を越えてしまうかもしれない。
でも、歌の場合 それでも人という存在の持つ悲しさとか苦しみとか そんな所に到達する事が大切だと私は思っています。
でなければ、この歌は家事や子育てをしない女性に関係ない?
いいえ、そんな事はないと思う。
家で待っている女性でなくても、まだまだ若くて 家事の経験が無くても
この歌に「そうよね〜〜〜」と思ってくれるだけの説得力を持ちたい。
いいえ、更に言うなら 男性にもこの歌を快く受け入れてもらわなくちゃ行けないんですもの。
どういう風に共感を呼ぶか、ね、それが問題でしょう?
この歌を歌うとき、私はとても楽しい。
変な言い方ですが。。。
全くこれと同じ状況にある人がライブに来ている確率は少ないし
その経験の有る人も どれくらいいるか分かりません。
それでも 聞いて下さる方々に、これを一つのドラマとして届いたら良いなあと思うのです。
お能だって、演じられているような状況になる事なんて有りませんが
それでも 心を打つ。
深く心を震わせます。
それは人という存在そのものの悲しみや儚さを感じさせ
古今東西の人の心にあるものと共振するからだと思うのです。
そこに行きたい。
そこに行きたい。
自分の歌の事、下手やなあ〜〜〜〜と思っても めげなくなりました。
それはね、やっと分かったのですが
今まで ずっとずっと見て来たお能とかバレエとかオペラとか
映画とかアートとか 色々なものに心を震わせて来た経験が沢山有るからです。
体中が震えるくらいの感動の経験が沢山有るからです。
その経験が私を支えていると感じるのです。
それらを思い出すとき 道が見えるような気がするのです。
到達点が見える気がするのです。
そこに行きたい。
歌という世界において そこに行きたいと願う気持ちと
仕事における成功と(あえてこの言葉を使いますが)
私自身が生きて行くと言う事が 同じ道だと言う事を感じられるようになり 歌が楽しくなりました。
・・・・とここまで書いて、色々な人の支えでここまで来たんだなあ・・・・と感慨深い気持ちになりました。
こんなへなちょこだった私を粘り強く指導して下さった師と色々な形で磨いてくれたミュージシャン、ボーカルの仲間、家族や友達。
そして お客様!
私の人生でこんなことが起こるなんてねえ。
不思議やわ。
ほんっま、不思議やわ。

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