掌からすごいエネルギーを発しているに違いないと感じる手に出会いました。
「Switchインタビュー」という番組です。
歌舞伎俳優の猿之助さんと硯を作る製硯師青柳貴史。この二人が互いをインタビューしあうというような内容でした。
「Direct & Deep」
普通、硯作りは分業なのだそうです。
でも青柳さんは 生産地に行って、自ら石を取り出してくるということでした。
そこの生活を知り、民族を知る、一緒に食事をし、文化を知ることがインスピレーションになるということでした。
彼は完全にオーダーの硯を作るのですが、そこでとても不思議な動きをします。
図面がある。
そこに手を出して、本当にそこにものがあるかのように 手で取り出して、目をつぶって回し始めます。
その手
本当にその硯になるはずの石の重さも形もとらえています。
すごい手です。
しかも、硯を作りながら何度も手で愛でるように撫で回します。
出来上がってからも何度も何度も 撫で回します。
「そこに職人の心が現れる。愛情を持って触ると潤いが出る。丸くなる。
手をかけてもらうと人の性格と同じで角が取れる。」
そんな風に言っていました。
彼の手。
猿之助さんにインタビューしている時、硯を作っているのではないのに、彼の手にはパワーを感じました。
それも実際に力を持っている。
掌からエネルギーを発しているのです。
それもとても強い。
あんな人を初めて見ました。
あ〜、こんな人がいるのだ〜〜〜と思いましたよ。
超能力があると言ってもいいような感じですもん。
そして、上記のようにインタビューを聞いて、ああ、やはり、本当に手で仕事をし、手でものを見てきた人なんだと思い、驚きました。
彼の仕事の歴史を作ってきた手だったのですね。
猿之助さんは彼に「家宝になる硯」を作って欲しいと注文したそうです。
彼は、石を選ぶ猿之助さんを見、硯で墨を擦る猿之助さんの手を見ていたそうです。
図面からあたかもそこに石があるかのように取り出している時、硯を持っているかのように手を回している時、彼は自分の手を猿之助さんの手にして持っていると言っていました。
硯で擦る猿之助さんの手を見て、その特徴、動かし方などを自分の手と想像力で現実のように再現できているのですね、彼の中では。
これです、私が欲しいもの。
言葉では決して表せないけれど、自分の中に確かにある現実。
形がないのに確かにそこにあるもの。
それを求めている人、知っている人に出会いたいなあ。
こうして本当に体の中に明確に、想像を絶する細やかさでそれを持っている人を知って、驚いています。
とっても嬉しい。
若かったら、力があったら弟子入りしたいくらいです。
力があったら・・と書いたのは、本当に実際の力がないととても掘れないことを知ったから。
彼は最後にこんなことも言っていました。
出来上がったものが完成形なのではなく、使う人が育てていくものなのだと。
使われて、研ぎに出されて戻ってきた時に「ああ、こんなに大きくなって」と嬉しくなることがあるそうですよ。
彼の中にある硯の世界は本当に魅力的だと思いました。
また一人、素晴らしい人を知りました。
そして、私の望んでいる世界がそこにあることも知りました。
ああ、いい1日の始まり


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