今日はいずみホールで催された福井敬さんのコンサートに行ってきました。
「あなたの聴きたい歌をあなたのために歌います」という企画で、コンサートのチケットを買う段に、いろいろリクエストができる仕組みでした。
私はどうしても聴きたい歌があってリクエストに書きましたけれど、今回は、たくさんの人がリクエストしたものがいろいろ選ばれたようでした。
正直なことを書きます。
私はオペラアリアを聴きたかったのです。
で、ワクワクして会場について、プログラムを見たら大半が日本の歌
本当にガックリきました。
日本の歌をオペラ歌手の方が歌って素晴らしかったという経験が、結構少ないのですもん。
がっかりしたな〜〜。
けれどね、よかったのです
福井さんは岩手の出身だそうで、それで宮沢賢治の「アメニモマケズ」を朗読なさることがあるそうです。
今日も朗読なさいました。
これがね、素晴らしくよかったのです。
私とはかなり違う解釈でした。
けれど、もっと生き生きしていて、もっと力強い。
「ああ、そういうことなのか」と思わされました。
聴いている私の目に情景が見えてくるかのようでした。
そしてその後「死んだ男の残したものは」という歌を歌われました。
この歌は谷川俊太郎さんが作詞をし 武満徹さんが作曲したものです。
ベトナム戦争が盛んだった頃です、私は若かった。
その時に 声高に叫ぶのではない反戦の方法として この歌を聞いていました。

死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子供
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった
死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子供
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった
死んだ子供の残したものは
ねじれた足と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった
死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった
死んだ彼らの残したものは
生きてる私 生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない
死んだ歴史の残したものは
輝く今日と また来る明日
他には何も残っていない
他には何も残っていない
福井さんの「アメニモマケズ」の朗読で少しうるうるしていた後にこれを聞いて 私は泣いちゃいました。
そして改めて、私たちはたくさんの犠牲のうえで「生きている私」としてここにいて「生きているあなた」と出会っているのだと思いました。
そんな私たちは「輝く今日」を享受するだけじゃなく「またくる明日」が 輝いているように残していくべきだとしみじみ思いました。
いつもそんなことを考えている私には、(福井さんはどのように思われたかわかりませんが)とても強いメッセージとしてこの歌が届きました。
福井さんの歌には、福井さんがその歌をどのように解釈し、それをどんな声で、どんな息で表現しようと思っていらっしゃるかがとても明確に表れていて、艶やかな声でその世界に誘われた気がしています。
美しい艶やかな声でした。
今日は、行って本当に良かったです。
たくさんの刺激を受け、たくさんの感動をいただき、いろんな学びもありました。
平日の午後でしたからね、観客は思ったより少なかったのかもしれません。
けれど、私には素晴らしいコンサートでした。
歌が、音楽が、上手い下手というような小さな価値観ではわからないような、豊かな、そして大きな価値ある世界だということが 福井さんの歌に表現されていました。
これなのですよね。
私が音楽に求めているのは。
今日、私は「福井敬さん」という方が、真摯に音楽と向き合い、真面目に真面目に生きてこられ、いろんなことを深く考えてこられたということが分かったのです。
彼の歌から伝わってきたのです。
それが嬉しかった。
福井敬さんにしか歌えない世界がありました。
レストランとかでもそうなのですけれどね、私は提供してくれる人の「人となり」が伝わるものを味わいたいのです。
今日は、そういう意味では本当に素晴らしい時間を過ごしました。
12月2日のライブに向けて いい刺激をいただいたなと思っています。
福井さん
ありがとうございました。

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