生きるのが苦しかった時 その原因は言葉にあると思った。
中学2年生の時だった。
それから 言葉を捨てようと思った。
言葉は現実を映しきれない。
どんなに言葉を駆使しても 現実に迫りきれない。
それらを縦横無尽に 結び付けたとしても
あちらこちらに 結びきれない現実があって 私達はその穴に落ち込んで
息も絶え絶えになってしまう。
なら、言葉を捨てよう。
この現実にしっかり足を置くには それがただ一つの道だと思った。
けど、現実に足を置けない人間が 更に言葉を捨てて
一体どのように 存在していけば良いのか?
私は「言葉を捨てる」と言うたった一枚のチケットを持って
足の置けない現実に 足を置こうともがいていた。
嵐に吹き飛ばされ 混沌から抜け出られず もみくちゃになっていても
たった一枚のチケット「言葉を捨てる」だけは離さずに来た。
それだけが 混沌を通り抜け 現実に行くためのチケットだった。
それだけが 信じ得ることだった。
子供たちが生まれるたびに 両手両足の一本ずつに 血が巡り
私の体は繋がっていって 無限の空間と永遠の時間の中にただポツンと
存在する私であることを 感じられるようになった。
今の私にとって 言葉はお盆の様なもの。
色々な思いなどを美しく整え、私の大切な宝物を
そのお盆に乗せて あなたに手渡す。
後はあなたにお任せよ。
後はあなたに託します。
私もまた そのように あなたを受け止められたら良いのに。
私もまた そのようにあなたを受け止めるために 私は今
自分を根底から取り戻そうとしている。

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