小さな頃(まだ学校にも行っていなかったと思う)、私はレコードを与えられていました。
二人の女の子が唱歌を歌っています。一人は声が美しく歌もうまい。
けれど、私はもう一人の女の子の歌の方が好きでした。
それはなぜ??
ずっと疑問に思ってきました。
カルロ・ベルゴンツィと言うテノール歌手がいました。何度引退してもファンが熱望し、またステージに上り歌うことを繰り返していました。
彼が70代後半の時に 聞きに行ったのです。
流石に声はしゃがれているし、ボリュームがないし、ピッチが悪くて高音や長く伸ばすところではちょっと苦しい。。。。。
けれど、彼が一番得意とするアリアを歌った時、会場は総立ちになり、拍手が止みませんでした。
声も出ないし、最後のとても大切な盛り上がりの一音は全く出ていなくて狂ってしまっていました。
それでも総立ち。
娘も私な泣きながら「これは一体何が起こっているんだろう」と思いました。
音楽にはいろいろな要素があります。
けれど、それらでは語り得ない「なにもの」かが音楽にはある。
それが何かをずっと考えてきました。
子供の頃からですからもう60年以上です。
歌を習い始め、ジャズというものに出会った時、クラシックしか聴いてこなかった私は戸惑ってばかり。
何もわからない。
まず、根本的なことを抑えようと思って、シンガーやミュージシャンに聞きました。
「ジャズで一番大切なのは何ですか?」
答えは「リズム」でした。
がっかりしました。
そんな音楽のパートでしかないことが一番大切なんだったら、興味が持てないからです。
聞き方が悪かったのでしょうね。
今朝、これらのすべてに答えとなる言葉を見つけることができたのです

嬉しくって興奮しています。
「道」を求めて迷っていたのに、今その「道」が真っ直ぐに目の前に伸びていっているのがくっきり見えた・・そんな感じです。
朝風呂の中で言葉がどんどん出てきたのですが、書き留められず、今やっとやっと パソコン前で書いています。
でも、言葉がどんどん消えていく!!
いいえ、宇宙に吸い寄せられて行ってしまっている感じです。
頑張って少しでも書き留めておきたい

ジャズで一番大切なものは?
折々に一緒に演奏するミュージシャンが出す「その時の音」に乗って、みんなで「その時の音」を生み出して、聴衆とも一緒に「その時の音楽を楽しむ」こと。

クラシックの演奏で一番大切なものは?
作曲家が心身を削る様にして生み出したその曲に真正面から対峙し、その魅力を最大限に引き出すこと。
この場合、自分はとか、聴衆はといっている余地はないと感じるのです。
これは聞き手である私が思っていることですが。

歌を歌う時に一番大切なことは?
歌う喜びに溢れて歌うこと。
これは、プロとかなんだとかに関係なく、人が歌を歌う時それが「生きること」と真っ直ぐにつながっていて欲しいと思っているんだと思います。
レコードのその女の子は その「歌う喜び」に溢れていたのではないかと思っています。
カルロ・ベルゴンツィは 彼が真剣に音楽と対峙し、重ね重ねてきたものが彼と一体になって、「彼自身がその音楽」となってそこにいたのだと思います。
音楽はツールでしかないと思うのです。
私たちがこの世の中に生を受けて色々なことをなしていく時の一つ。
「色々なもののうちの一つ」
その「色々」なものの全てが目指しているのが、命を最大限に生きるということ。
「道」を求めそれを歩くこと。
どんな靴を履こうと、履いている靴が大切なのではなくて、「道」を求めていることが大切なのだと思います。
これが私がずっとずっとずっと、考えてきたことの答えです。
言葉を持たない私が、こうして答えを言葉にすることができました。
俳句で言葉と七転八倒して 力尽きそうになった時、言葉からスッと寄ってきてくれたと感じて以来、言葉はもう私の恐怖ではなくなりました。
思い起こすと、たくさんの人からもらった言葉やきっかけが いろんな形で言葉として私の頭の中に湧き起こってきたんだなあと思います。
そう考えると、どんなことにも感謝したくなります。
がっかりにもね。そのおかげで、また一つ、明確になったのですから。
今、私は感謝の心いっぱいです
はい、これが私の答えです。

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