このアウトビアンキにはいつも不思議な感覚が残るが特に印象的だったことがある。
いつも会社の後輩がアウトビアンキに乗りたがるので了承しても始動しないのである。
また同窓会で知人がテストドライブをしようとした時も全く始動しない。
僕が乗り込み特別な事をしなくともその後すぐさま始動するのだが、再度後輩や知人が始動を試みてもまったくダメなのだ。
多分本来の調子を崩していたのかもしれない。
元々キャブはチューニング用ビッグキャブレターに交換されておりそれも原因の一つだと思う、しかしそれだけで納得できない事が多々あった。
そんな不具合のような事も愛着として僕は思っていた。
自分しか動かせないアウトビアンキ。
しかしその頃の僕にはもっと大事なことがあった。
少しずつ今まで自分が嫌っていた大人の考えが浮かんできていた。
まともな国産車に乗るべきではないか?と。
車と家族を天秤にかけることが最もおかしい話だが、正直この頃僕にはそんな部分も見え隠れしていたと思う、しかし可愛い子供を、クーラーも無く危ういアウトビアンキに乗せるわけにはいかないと思っていた。
