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「1000の楽器を弾く男」若林忠宏の最新刊です。
◎『スロー・ミュージックで行こう』 〜民族音楽の持つ「力」〜

「スロー・ライフ」が叫ばれ、その実践としての「スロー・フード」がブームとなっています。本書のサブ・タイトルは「民族音楽のススメ」。民族音楽演奏家の若林さんが提唱する「スロー・ミュージック」は「スロー・ライフ」の民族音楽による実践です。
「民族音楽はひとつの音楽ジャンルではありません。『第三世界の音楽』、『商業化されていない音楽』でもありません。『民族音楽』と呼ばれるものを聴いたり、『民族楽器』を演奏することだけではスロー・ライフの実践にはなりません」
若林さんにとって、スロー・ミュージックとは音楽を通じて人とのつながり、さらには土とのつながりを大切にする「生き方」です。「音楽の背後には、その音楽を生んだ文化・伝統・歴史があり、民族音楽を通じてそれらに触れられる可能性があります。そういう民族音楽がスロー・ライフのBGMとなるのにふさわしいと思います」
民族楽器コーナーを置く楽器店が増えましたが販売員は楽器の背景・演奏法をよく知りません。「このままではただのブームで終わってしまう」という危機感も若林さんを執筆に駆り立たせました。
九百種類、二千五百点以上の民族楽器コレクターでもある若林さんによる楽器解説、演奏法、「民族楽器だから体に優しいと思ったら大間違い」という演奏習得上の苦労話も紹介しています。
「民族音楽さえも流行音楽のように消費の対象としてしまったら後には何も残りません。スロー・ミュージックの提唱は、人や土から遠ざかってしまった現代人への警鐘でもあるのです」
(岩波書店・二二〇〇円)

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