東京都北区豊島5丁目団地はあることで有名になりました。
昨年発覚したダイオキシン問題はこの1月にはTBSの「噂の!東京マガジン」でも取り上げられ、ドイツの基準では即刻全面土の入れ替えが必要なほどの汚染タ態が浮き彫りになっています。
ことの発端は昨年2月、2002年度で廃校となった北区立豊島東小学校の跡地を特別養護老人ホーム等の福祉施設を誘致するため地ソ調査を行ったところ、基準値を上回るダイオキシン類が検出されたことです。これをきっかけに、団地内や周辺各所で土壌の検査を実施。保育園、公園、小学校や住居部分のすぐそばなどいたるところで基準値を上回るダイオキシン類・重金属類が検出されました。
北区は区管理施設についてはブルーシートをかぶせるなど、また団地の大部分を管理する都市再生機構は、6月までに植栽部分すべてに50cmの盛土をする対策を講じています。しかし、盛土は重金属類に対しては有効とされていますが、ダイオキシン類についてはその効果は明確ではありません。北区は昨年12月、団地とその周辺地域を「ダイオキシン類土壌汚染対策地域」として指定するよう東京都に要請、現在、都環境審議会で検討されています。
「汚染対策地域」に指定されれば、現地を封鎖しての土の洗浄、入れ替えが必要となります。これまで大田区などでの例がありますが、これほど大規模の住宅地となると前例がありません。費用の面でも土壌の全面入れ替えとなると2000億円かかるとも言われます。3日夜に開かれた第二回審議会でも、都市再生機構側は「汚染対策地域」の指定を回避しようと狙い盛土のみの対策の有効性を主張しました。これに対して、審議会委員の大塚直早稲田大学教授は、健康被害のおそれを防止するためにリスク管理の必要があるのであれば「汚染対策地域と指定すべき」との意見を提出しました。
健康調査については、区が今月18・19の両日に土壌との接触が濃いと見られる人を対象に行うことになりました。05年度の補正予算には、土壌汚染対策事業補助金として二27億6700万円が計上されました。都市再生機構は今年の家賃改定にあたり1553戸で値下げをする一方で、1469戸について最大1600円の値上げを発表しました。
●町作りの観点からも
団地内には、北区で10の指に入ると言われる桜の名所があります。ダイオキシン問題は昨年の春、その桜の下で楽しくお酒を飲んだ直後に発覚したのです。また銀杏並木でも、昨秋はギンナン拾いをする人が少なくなりました。団地内を歩くと、盛土作業のため植栽の多くが伐採され、一階部分のベランダが丸見えになっている棟も。「ここはあじさいがとってもきれいだったのに」。住人がこういう言う場所には、ほとんど木が残っておらず、盛土に幹の下の部分が隠されて足が短くなった木が数本あるだけでした。

コンクリートで覆われた園庭。でも使用禁止。
豊島五丁目団地は誕生から33年がたち、団地住民の4割近くが年金生活メです。一方、保育園の園庭が今でも使用禁止、散歩に出かけても、団地内には子どもたちが土に触れるところがないという状況で、安心して子どもを育てられないとなると、今後、子育て世代がさらに流出し、高齢化に拍ヤがかかる可能性もあります。
そんな中、団地自治会では住民の要望を知ろうと初めてアンケートに取り組み始めました。同自治会の土壌対策委員長の岩井春樹さんは「この問題は次の世代にかかわることで、今、完全にとめなければならないと思っています。そのためにも住民の関心を大いに高めていかなくては」と話しました。

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