水が凍るのは0℃以下。先日気温が5℃程度なのにフロントガラスが凍っていた。これは、輻射熱で車が冷えていたためと思われる。ちょっと極端な仮定を置いた上で計算してみよう。
・外気温は5℃
・フロントガラスへの入熱は空気から。
・輻射熱は外からは来ない。実際は周囲の建物などからやってくるのだが、無視。
熱の移動には3つの形式がある。まずは伝導伝熱。これは、温度が高いところから低いところに移動することによる伝熱。動かない金属プレートをイメージし、片方の面を加熱したらもう片方の面の温度が徐々に上がって熱くなる現象。次に対流伝熱。これは熱い物体が動くことによって熱が移動することによる伝熱。風呂をイメージするのがいいかな。風呂を沸かすとまずは上のほうばかり熱くなる。これをかきまぜることですぐに底まで暖かくなるが、それは対流伝熱のため。最後に輻射伝熱。どんな物体でも、実は熱を「光」の形で放出している。その強さは、絶対温度の4乗に比例する。(Stefan-Boltzmannの式) 今回は空気からフロントガラスへの伝導伝熱と、フロントガラスから放射される輻射伝熱を取り上げる。
さて。外気温をTa、フロントガラスの温度をTgとおく。また、伝熱係数なる係数hを15W/(uK)で与える。この係数は、「温度差が1℃のとき、1uあたり何ワットの熱量の移動速度があるか」というものである。無風近くのときhは大体こんなものである。このとき、空気からフロントガラスに入る1uあたりの熱量Qaは
Qa=h(Ta−Tg)で与えられる。
一方、輻射熱Qrは次の式で与えられるものとする。
Qr=σTg^4、ここでσ=5.67×10^(-8)W/(uK^2)である。なお、Tgは絶対温度である。
ここで、Qa=Qrが成り立つ。Ta=5℃、すなわち273.15を足してTa=278.15K(絶対温度)として式が成り立つようにTgをエクセルファイルなどで求めると、Tg=260.69K、すなわち-12.46℃となる。
仮定として周りからの輻射伝熱などによる加熱を無視したところ、気温が5℃なのにフロントガラスが凍ってもおかしくない値となった。
と、ここで、Mr.S から「それじゃあ20℃でも凍結しちゃいますよ」という突っ込みが入った。そこで、空から来る輻射熱を入熱として考慮することにする。ちょっとややこしい式になる。この入熱をQr2と置くと、
Qr2=εgεaσTa^4となる。ここで、εgは空から来る輻射熱のうち、どれだけガラスが吸収するか、という値で、3ミリのガラスで0.93というものが過去にヒットした。(urlは失念) εaは大気中の温度や二酸化炭素と水蒸気の濃度によって決まる値である。
ガラスの表面から輻射熱が出ているように、空気中の二酸化炭素や水蒸気は熱を赤外線などの形で放出している。それがどのくらいか、というのが以下のサイトに示されている。
http://homepage1.nifty.com/gfk/housyaritsu-keisan.htm
で。この中のエクセルを再現し、εaが求まるようにした。
そして、気温5℃、湿度50%の時にQr=Qr2+Qaとなるようなガラスの温度を求めた。すると、Tg=273.19K=0.04℃というとても微妙な温度になった(笑)。
ちなみにTg=273.15K=0℃になるTaは278.10K、すなわち4.95℃である。
結論。「空からの輻射を真面目に評価せんとあかんなあ」と。

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