『リベラル再起動のために』(北田暁大、白井聡、五野井郁夫の対談、毎日新聞出版)
とりあえず、ツイッターでつぶやいたことを貼る。
・白井聡さんと北田暁大さんの『リベラル再起動のために』を読んでると「左派はアホリベと縁を切り、独自に立て直せ」と言ってるようにしか思えん。
・俺の立場や考えは、白井さんより北田さんに近い。
・白井先生、ごめん、あんた、全然リベラルなるボロクズに取り込まれてないわ!
・ベンヤミン以後、サブカルを下に見ることは知性の欠落だ。
・俺の脳内の引き出しには、マルクスもヘーゲルもカントもこち亀もドラえもんも並列にある。
・ドラえもんの単行本の影響は強く受けてるけど、アニメ、ましてや映画は殆ど或いは全く見てないから、原作の毒気と皮肉はたっぷり吸収。
・五野井さんの言う通り(『リベラル再起動のために』p191、「目の前の人に手を差しのべないといけない」)なんだけど、実際やりだすと、「あれも、これも」と言われて消耗しまくり、結構すぐにやめざるを得なくなるんだよね。これが最大の問題。プロ市民は除くが。
・「リベラル再起動のために」読了。、かなり強烈に批判すべきところがある。第一は、「人権ゆえに、朝鮮学校への補助金に反対する在日朝鮮人がいる」ということを無視していること。
・「戦後民主主義」の「虚妄」の条件が瓦解しつつあるから、大衆は「右傾化」しているのに、その「虚妄」を「実体化」したなどといいなしても、何の説得力も、信仰を異にするものには説得力がない。
・五野井さんは、例の辛淑玉文書を読んでいるのだろうか? 読んでいて、「人権故に朝鮮学校への補助金削減反対」と言うのならば、確信犯の従北と言わざるを得ない。十三ベース事件の界隈にいて、読んでないはずがなかろう。
・あと、白井さんだけは大丈夫と信じたいが、レーニンをしっかり読むならば、政治に関わるものは権力を取ること、そのために泥を被る覚悟がないといけないことを知らなければ、時の権力に飲み込まれると言うことだが、どうも、北田さんと五野井さんは、「時の権力に近寄らないこと」と誤読しているように感じる。違う。レーニンは権力への意思の塊だ。でないと、ドゥーマに党員を送り込まなかっただろう。「自分達の権力」を想像・創造できないから、時の権力に取り込まれるのだ。
・結論。リベラルが再起動したところで勝ち目なし、左翼の再起動を、である。
・どのようなレーニンかは、かのバーナード・ショウが否定的に描いた、レーニンである。さて、今の左翼にその覚悟があるかな? 俺は憲法制定会議を閉鎖し、チェカーを作り、死刑廃止に反対したレーニンに賛成する。
・「リベラル再起動のために」でひとつだけ良いところを挙げると、
意識他界系でなく、民衆の声を拾う政治的回路を作らなければならないと結論を出しているところ。
・五野井さんが本気でp218で書いておられることを実行するならば、しばき隊的なものと決別することだな。
で。最後はしつこく書こう。とても大事なことだからだ。五野井さんは、正しくも文化現象を捉えながら、時代を批評されている。だが、その文化的側面で運動を大衆化するという功績に貢献しつつも、イデオロギーの深いところの不在、あるいは、欠落ゆえに、しばき隊およびSEALDs運動は、大衆、特に古くから地道に運動に携わっていた部分からの批判があったのは記憶に新しい。そして、それに対する反批判の低劣さも。
五野井さんは以下のように書いている。
今すぐに何ができるのかといえば、それは数という構成的な力の頭数となることだ。内的な階層分化と差異化による潰し合いに陥らず、お互いの差異を保ちつつも、差異を越えて主権者であるわれわれ同士が横に繋がらなければ、こんにちの自由と民主主義の危機に対処することはできない。
極めて正論だ。だが、五野井さんが深くかかわっておられるしばき隊は例外なのか? だとすれば、橘玲さんがリベラルが嫌われる最大の理由として挙げられているダブルスタンダードそのものではないか。しばき隊のやり方に対し、ガチの左翼勢力からの批判に対し、しばき隊系列が理不尽な罵倒の嵐、知性の欠落としか言いようのない返し、そういうものをうんざりするほど見ている。五野井さんには言行一致をお願いしたい。しばき隊の作風こそ「潰し合い」の最たるものだからだ。
そして、十三ベース事件を引き起こした関西のしばき隊系列は、まさに彼らのかつての言葉故に――暴力を引き起こした人間集団が、それへの謝罪も反省も口にせずに運動圏に登場してはならない――、運動圏から退場しなくてはならないのだ。それを黙認した李信恵なども。退場しないならば、そんな運動はダブスタの腐敗し切ったものであり、我々OBは大衆に暴露するのみ。(もちろん、ネットだけではない。それなりのコネがある。)
結論として、この本には示唆があるが、しかし、「リベラル再起動のため」ということの本質的なところでは先に取り上げた橘玲さんの本に遠く及ばない。ま、リベラルが死んで、左翼というか極左の復権が必要だと俺は思う。

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