(喪中につき)本年もよろしくお願いいたします。(のみ)
さて、busayo_dic同志に絡んでいる方の憲法認識が興味深い。
自衛隊を憲法で位置づける=改憲するべき、という同志のつぶやきが「戦争を望む」ことになるらしい。いや、歴史を振り返ったら分かるが、戦争ってのは様々な要因によって引き起こされるが、直接的なのは軍事バランスが崩れた時である。有名なのは、赤軍大粛清でソ連の軍事力が低下したときに、ナチスドイツがポーランド、そしてソ連に攻め込んだこと。
よって、戦争のリスクを下げるには軍事バランスを保っておいて、いわゆる「ステータス・クオ」を保つのが常道だ。好き嫌いは別にして、日本の自衛隊は米軍補助の大きな戦力として東アジアに存在する。そして、それは憲法を素直に読めば違憲の存在として。それを可能ならしめているのは日米同盟である。日米同盟が日本国憲法より上位に位置することは、多くの書物で述べられている。(有名なのは孫崎先生の本)そういう矛盾に日本国は置かれているのだ。
この矛盾を解決するには二つ道がある。
当然、改憲をして自衛隊を軍隊として現状の異常な状態を解消することである。その上で、専守防衛を明記するなり、国連軍(実質米軍)の傘下に入るとか派遣するとか記せばいい。かつての小沢一郎の言う「普通の国」路線である。因みに、ガチ左翼の友人たちは「自民党政府では改憲阻止を言うが、自分たちが革命政権を作ったら当然自衛のために自衛隊を国軍化=改憲するよ、そうしないと革命政権を内外の反革命から守ることは出来ないから」と言っていた。日本共産党員も言っていたよ。(日本共産党は元々改憲論者、ただし、自分たちの権力で、であり、左翼的に正しい。)
次に、憲法九条の理念を世界に広げ、世界中でパワーバランスを保ちつつ軍縮、いずれは全世界での軍隊廃止を目指すこと。だが、それは第一次世界大戦の厭戦気分の中で行われようとしたことがあったが、結局は軍事バランスを損ない(具体的にはドイツ軍が一時壊滅した)、反動としてナチスが力を握った背景と言われる。ことほど左様にこの路線は難しい。大体、軍事力のある国家が軍事的優位を確定するために「軍縮」は行われる。ソ連崩壊前のINF交渉なんか典型的だよね。因みに、憲法九条を日本以外に広めるべき、という論理的に当たり前のことを左翼で言っているのは残念ながら革マルくらいである。
護憲派は言うまでもなく、改憲派も戦争など望んでいない。戦争が起きれば、貿易国家日本が立ち行かなくなる。で。護憲派の一部が言う非武装中立によって戦争のリスクは高まる可能性が大きい。また、法的に宙ぶらりんな自衛隊を憲法にしっかり位置づけることで、自衛隊を縛ってシビリアンコントロールを徹底することで戦前のような軍部の暴走、今風なら無制限の海外派兵(しかも、国連という名のアメリカの道具の傘下)を防ぐことが出来るだろう。よって、護憲を貫徹することが戦争の危機を高め、改憲することが戦争の危機を低くすることも考えられるのだ。
日本国憲法の理念を是とするも、それが国際社会の力のバランスの上にあるので、理念を世界大で実現する方法を明示できないと、意味がない。日本が護憲をいくら叫ぼうが、そんなものは大東亜共栄圏を叫んでいたメンタリティー(日本人の主意主義で世界を動かせる)と何ら変わりがない、というのは戦後何度も指摘されてきたこと。いつまでもそこにたたずんではいられないのだ。

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