『良いテロリストのための教科書』(外山恒一著、青林堂)
この本を読んでもテロリストとして空気が入れられることはない(笑)。著者は、「私が当選すれば諸君は驚く、私も驚く」と都知事選で言ったためか、キワモノ扱いである。また、自覚的に自称ファシストなので、その点でもキワモノ扱いである。だが、氏の書物を読めば、多少イタいところがあるとはいえ、極めて真っ当でバランス感覚に優れた知性の持ち主であることが分かる。
ただ、「ファシズム」という言葉は同時代(ムッソリーニの時代)的には肯定的に言及されることが多く、著者は「極右と極左を統合」(p5)する野望があり、その点からファシズムを自称しているようだ。だから、左派による罵倒語としてや、あるいはアレントが言及したような意味での全体主義としてのファシズムとは意味合いが違うようである。
本書は”右傾化した若者たち”を主要読者に想定し、「敵を知れ」という趣旨の本である。すなわち、右傾化した若者たちのための、左翼入門書である。高校生の頃からの自分史、そして戦後左翼史の本である。というわけで、テロリストの教科書ではなく、知性に欠ける「ネトウヨ」を、知性のある「ネトウヨ」に啓蒙する書物である。レーニンを参照項にすれば、そんな「ネトウヨ」は革命戦士の卵である。
なお、著者は先日「全共闘以後」を出版したが、これは著者がこれからやるであろうことの「前史」であるとのことである。かつてレーニンは「革命を書くよりも、やっちゃうほうが楽しいもんね」と言った。そうなることを希望するやら、嫌がるやらw

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