『そろそろ左派は<経済>を語ろう レフト3・0の政治経済学』(ブレイディみかこ×松尾匡×北田暁大著、亜紀書房)
北田氏やブレイディ氏が話題を振り、経済学者の松尾氏が答える形式で今の日本経済、特にアベノミクスの問題点を明らかにするとともに、左派にはびこる反成長、緊縮志向の問題点、特にその志向が経済的弱者にとっていかに抑圧的であり、言ってしまえば壊滅的であるかを示す。そしてアベノミクスについては「アクセルを踏むという正しいことを言いながら、同時にブレーキを踏んでいる」と手厳しい。今はアベノミクス以上に財政投資を行い、経済のパイを膨らませることで全体に金を行き渡らせることが大事である、要はケインズ経済学の手法が大事であるとする。まあ、分からないでもない。
だが、結果としてアベノミクスの「アクセル」は大企業の内部留保にブタ積みされる結果となった。小生はアベノミクスの第一の矢は支持するものである。だけど、非正規雇用問題を始め、雇用形態の見直し(財界が思いっきり反対するだろう)などをはじめとした大きな改革というか、言ってしまえば過去に戻す「反動的」諸施策がなければ松尾氏の提言する政策は実効を伴わないと思う。再分配の視点が弱いと、読後半年以上経って思う。

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