『若ゲのいたり』(田中圭一著、角川書店)
基本的に漫画の読書メモは書かない。だが、この作品についてはどうしても書いておきたいところがあった。通勤電車の中で読んで、泣いたからだ。
p077
MOTHERというゲームを作った糸井重里さんが宇都宮市役所に勤めるアメリカ人の女子と話した時のエピソード。
「子どもの頃にプレイした『MOTHER』に衝撃を受けて、日本語を勉強するようになり日本で働きたいと思うようになりました」
「アメリカンヒーローはみんなマッチョだけど、そんなアメリカ人ばかりじゃないんです。弱いアメリカ人もたくさんいて、そんな彼らに”弱いけどでも俺たちだってがんばっているんだぞ!”って思わせてくれたゲーム。それが『MOTHER』でした。
漫画もそうだが、ゲームも無限の表現の可能性がある。ゲーマーをやめて四半世紀たち、今時のゲーム事情は分からないが、ファイナルファンタジーシリーズを始め、そういう可能性は常に感じてきた。それへの挑戦はクリエーターこそが感じ、信じていることが分かった。
田中圭一氏と言えば、かつては手塚治虫らの画風をぱくった下品な漫画でカルト的人気を集めたが、うつ抜け日記で一般にブレークしてからは、こういううんちく漫画を描いているらしい。古谷三敏の後継と言えるのかな。

1