『前世療法 ──米国精神科医が体験した輪廻転生の秘密』(ブライアン・L・ワイス著、山川紘矢・亜希子訳、PHP文庫)
ざくっと書くと、幼児と言って良い頃に溺死しかけた。その時、記憶が過去に飛びすぎて、生まれる前まで蘇った。その時に感じたのは「もう、ここに戻るの?」ということである。ただ、前世までは記憶は行っていない。そういう次第で、霊魂不滅や輪廻転生と言われたら、「うん、そうだね」という感じである。
さて、本書は精神科医がキャサリンという女性にはどのようなトラウマがあり、解決すべきかという治療のために退行睡眠を実施した結果、前世の記憶が蘇ったという話から入り、それに留まらない精神世界が記述される。
小生はそういう記憶があるので、スウェデンボルグやエドガー・ケーシーをはじめ、いくつか精神世界の本を読んでいる。書かれていることは大体同じだが、微妙に違うのかな。感じ方は触れている宗教やイデオロギーで違うのかも知れない。著者は、科学的・客観的分析の訓練を積み、それを血肉化した人で、病院の精神科の部長である。なので、キャサリンの言うことを客観的に記録し続けていて、抑制された筆致である。キャサリンは85回?に及ぶ人間としての過去世で溺死、戦死、売春、様々な苦痛に晒されていて、その悪夢に苦しんでいて、「もう大丈夫だよ」と声を掛けられ、「精霊」の教えを聞いて快方に向かった。霊魂は、様々な経験をし、そこから教訓を深く身につけることで霊的に成長する。なお何度も過去世で因縁があり、現世に続く関係もある。それは魂の必要に応じて配されているようだ。そして神に近づいていく。神は一つとも言えるし、多数とも言える。究極は一緒で、人間の霊魂に優劣はない。お互いに分かち合い、助けあって生きることが大事で、それが本来の姿、要は広い意味で共産主義的なのが本来なのである。神の国は共産主義だ。そして、戦争は魂を大いに傷つける。キャサリンの直前の過去世は、第二次世界大戦におけるドイツ兵士であった。転生は男から女、その逆も一杯ある。そして、記憶が蘇るのは辛い人生ばかり。辛い人生は教訓が多いということらしい。これに限らず、聖書をはじめとする宗教書の意味を色々考えさせられる読書だった。ラクダ〜穴など。また、前世の記憶によって、その時の言語を理解することもあるようだ。そして、あの世は再生の段階である。魂が大いに進化するのは、物質世界においてである。物質世界が大事なのだ。
なお、超自我、集合的無意識と名付けられることもある精霊、守護霊、マスターと呼ばれる精神の言うことで特に大事だと思ったことを。
「知ることによって、我々は神に近づく」(p47)
「(物質)世界へ送られてきた目的を達した時、我々は自分でそれを知る。自分の時間が終わったのを知り、死を受け入れるのだ。」(p90)
「何事も、夢中になりすぎてはいけない」(p93)
「平和というものは存在する。しかし、ここにはない。(中略)人は愛と理解と英知を忘れている。」(p187)
「我々はみんな同じなのだ。一人の人が他の人より偉大だということはない。」(p188)
「人間はバランスを学ぼうとしなかった。ましてや、それを実行しようともしなかった。こんなやり方では、いつかは自分自身を滅ぼしてしまうだろう。しかし自然は生き残る。少なくとも植物は生き残るであろう」(p245)
「幸せはごく普通のことの中にある。考えすぎたり、動きすぎると、幸せはどこかへ行ってしまうのだ」(p245)
「愛と慈悲と誠実で自らを満たし、清らかな己れを感じ、病的な恐れを取り去るために、人はこのもう一つの意識に到達することが大切である」(p245)
「他の人々を助けなさい。我々はみな同じ一つの船を漕いでいる仲間同士なのだ。協力してオールを引かなかったら、この世は恐ろしく孤独な場所になってしまうだろう」(p247)
(人間の資質、親の財産など、人間起源不平等論的な著者の突っ込みに対するマスターの答え)
「直径が30センチの大きさのダイヤモンドを想像してみなさい。そのダイヤモンドには一千個の面があるが、そのどれも、泥や油にまみれている。一つひとつの面がキラキラと輝き出し、虹の光を反射するようになるまで磨いてゆくのが、魂の仕事なのだ」(p247)
「人々の間の差は、ただどれくらいの面をすでにきれいにしたかということだけなのだ。しかし、どのダイヤモンドもすべて同じで、しかもすべてが完璧なのだ」(p248)

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