『社長って何だ!』(丹羽宇一郎著、講談社現代新書=2552)
バブル崩壊後、大手企業の先陣を切って不良債権を一括処理した伝説の伊藤忠社長。また、60年安保の闘士でもあった。
この本は、社長の孤独、二面性についてページを割くとともに、エリートと言われる人間は社会全体のことを考え、特にみんなが飯を食えるようにすることを考えなくてはならないことを力説している。特に圧倒的高給取りに価値があるのではなくて、地道に働く圧倒的多数の人々こそが尊いことを忘れてはエリートじゃない、という指摘は大事。コンビニ店員が忙しく働いても1分で20円程度の賃金だが、社長はトイレにいても1分1000円の報酬。これを「1ちゃりーん」という表現でしていたのは特に印象深かった。
社長だけでなく、社会全体に影響を与える立場の人間は自らを律し、社会全体のことを考え、特に弱者への共感を忘れてはならない。ネオリベ糞理論に支配されたかのような現代社会に対する、反時代的な社長論、リーダー論に見えるかも知れないが、これこそ必要な社長論、リーダー論と言えよう。

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