旧ネーム (まさじぃ)です!

2016/2/4

『おや! 花びらが落ちたよ』  後編・・  文学

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『おや! 花びらが落ちたよ』  ― 後編 ―

《いとう 文龍 13歳の創作小説》



彼が、あまりくだらない事ばかりしゃべるので、私は彼の持っているタバコの煙を、見つめていた。

煙は、タバコを放れて、一直線に上昇していき、それから少し上がった所で、少しばかり風に揺れた。

しかし、また元通り垂直に上がっていった。

そして、ほとんど天井に着くくらいの高さで、今度は窓の方に水平に流れていった。

そして、窓に届くか辺りの所で、少し下がったかと思うと、窓から入る風にカミソリで切られたように、さっと横流れして消えてしまった。



そこで私は、彼がしきりに天井の方を向いているのを知った。

私が、あまり天井の方ばかり見るので、彼もつられて見ているのだろうと、思わず苦笑した。

彼は、まだ梅干がなんだかんだと言っている。

私は、今度はテーブルにのっている花瓶を眺め始めた。

今日は、いつもと違って綺麗な花がさしてある。

何の花か知らないが、真っ赤で小さな花びらがたくさんついている。



不思議にも、彼が言葉を強める度に、その花びらが一枚づつ落ちていった。

おや、今度は三枚落ちたな? と思っていると、彼は急にテーブルをドン!と叩いて「聞いているんですか」と言った。

私は、ビックリして彼の方に向き直ったので、花びらが何枚落ちたか知らない。

後でチラッと見ると、テーブルは花びらで埋まっていた。


  完

                   著者  いとう 文龍
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2016/2/3

『おや! 花びらが落ちたよ』  前編・・  文学

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『おや! 花びらが落ちたよ』  ―― 前編 ――

《いとう 文龍 13歳の創作小説》



私は、今度の研究で失敗したので、非常に気が滅入っていた。

私は、或る大学の教授であるが、この度「白髪の根源」という題目によって研究を進めていた。

まさか、髪の成分中に有るバーベル酸がRH+の時に比べて、RH−の場合、ペーハー値が2.6倍になるとは、思いもよらなかった。

いや、こんなことを言っても失礼だが、君らには判るまい。


実は、今私の助手の一人が、私を慰めに来てくれている。

それが、よりによって、我が助手中一番のお喋りときている。

一人でゆっくり、考え直そうと思っている、私の身にもなってみろというものだ。


私は、書斎のソファーに、どっかと腰を降ろして助手の話を聞いているが、相手はくだらない事ばかり話している。

白髪は、梅干しをつけてこすれば治るとか、白髪にはニンニクが一番いいとか、誰もこんな話を聞いていないのに、彼は得意になって喋っている。

だいいち、ニンニクを髪に付けて外に出られると思っているのだろうか。


彼が、あまりくだらない事ばかり喋るので、私は彼の持っているタバコの煙を見つめていた。

・・・・・・・・・


―― 前編おわり ――   後編に続く


                       著者  いとう 文龍 
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2016/2/2

『わがはいは 猫である』 後編・・  文学

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『わがはいは 猫である』   ― 後編 ―

《いとう 文龍 13歳の創作小説》



急に扉が開いて、主人が入ってきた。

左手に新聞紙を持って、右手には盆に載せたコーヒーが二つ。

なんで奥さんが、後からコーヒーを持ってこないの? 私は、また夫婦喧嘩したなと直感した。

主人が着ている服は、今まで寝ていたものが急いで着替えてきたものらしい、ワイシャツのボタンがひとつづつずれている。

客は意地の悪い事に、これを注意しようともしない。

このまま、外に連れ出そうとするのだろうか。


どうやら、主人思いの私の出番になってきたらしい。

ソファーを降りて、主人のズボンの裾をガリガリと爪でかぐってみた。

そうすると主人は「また、食べ物をねだりに来たな! どこかに行ってろ」と吾輩を足でポンと蹴とばした。

せっかくの吾輩の行為を、無にするとは、腹が立ったのと、腹が減ったのとで情けなくなり、またソファーに寝そべることにした。

しかし、ほんとは主人を思っての事ではなく、腹が減ったのでちょっかいを出してみたのだが、主人の勘も相変わらず鋭い、今度は何かほかの方法を考えなくてはと思う。


主人は、私の前のソファーに、どっかと腰を降ろして、煙草に火をつけた。

客は、深々と腰かけたままで、話をしはじめた。

どうやら、この青年は、主人の学校の教え子になるらしい。


話は、文学論に発展していった。

「しかし君、わしはモーパッサンだけは嫌いだ!」

『えっ? なぜですか、私は大ファンですよ、なぜお嫌いなんですか!』

「そこだよ 君!」と、言いながら主人は体を乗り出してきたが、まだ、たばこの灰は落ちない。

さっきから、まだか まだかと待っているのだが、今日に限っては、なかなか落ちない。

主人は、話に夢中になるとテーブルの上にタバコの灰を落とす癖が有る。

毎日こんなふうだから、テーブルの上はもう焦げだらけになっているのである。


私は、とうとうあきらめて、窓の外を見た。

外には、何かしら広葉樹が一本立っている。

葉は、今が盛りとしきりに散り落ちている。

その落ち葉が窓の鉄格子に三枚引っかかっり、今はもう朽ちている。

その広葉樹の枝が二股になっている所に、とかげがチョロチョロと動いて、木の向こう側に行くのが見えた。


私は、のそっと立ち上がって、窓に飛びあがった。

後ろを振り返ってみると、テーブルの上にタバコの灰が二個所落ちている。

何を勘違いしたのかハエが飛んできて、その灰の上に止まったり、飛んだりを繰り返している。

外は、さほど暑くはない。

と、言っても室内もそんなには涼しくない。

なにしろ、窓を開けてクーラーを掛けているくらいだから、涼しくなるはずがない。

そんな無駄遣いをするくらいなら、私の食事にサンマのへそでも増やしてくれればいいと思っている。


また、とかげがさっきの所をチョロチョロと走った。

私は、何をするともなく窓を飛び降りて外に出た。

文学論は、ますます激しくなっていくのが聞こえる。

もう今頃は、たばこの灰が四つくらい落ちて、テーブルを焦がしている事だろう。

奥さんに見つかって、また夫婦げんかにならなければいいが。

サンマのへそが増えるどころか、私の食事自体が抜きになっても、困るんだが。


後編 ―― おわり


                  筆者   いとう 文龍



次号は

―― 前書き ――

世界における、すべての情けなさ、バカバカしさを、この一冊に集約。

世に自信をもって送り出す作品。

人間社会における悲哀を、教授という人間の姿を借りて、あなたの脳裏に映像する。

今若者の間で、人気絶頂の著者が放つ会心の“小傑作”


  『おや! 花びらが落ちたよ』


 続く・・・
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2016/2/1

『わがはいは 猫である』 前編  文学

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『わがはいは 猫である』  ― 前編 ―

《いとう 文龍 13歳の創作小説》



私は、ひげをひっぱられて、目が覚めた。

私は猫であるが、どこかの模倣小説のように、自分で吾輩とは言わない。

さて、私の前には、若いサラリーマンらしい男が、ソファに深々と腰かけて、こちらを見ながら笑っている。

猫の一番大事な処をひっぱられたので、少し腹が立ったが、主人の大事な客らしいので、ぐっと我慢した。


この部屋には、彼が一人しかいない。

彼がいる部屋は、主人の書斎兼応接室となっている。

部屋の中央には、テーブルが一つ、長いソファーが一つ、そして小さいソファーが二つある。

私は、その長いソファーに長々と寝そべっていたが、その客は大胆にも、私専用の長いソファーに、私と並んで座っている。

いい度胸をしているものだと感心する。


このソファーの正面には、部屋の扉が見え、その横にクーラーが涼しい風を送り出している。

扉を挟んで、その反対側には、絵が掛けてある。

私はいまだかつてこれが何の絵であるか、判断がつかない。

サバのようでもあるし、サンマのようでもある。

あるいは、これが話に聞いたクジラというものかもしれない。

とにかく、へんてこな絵であると共に、私の経験にも限界があると気がめいるばかりである。

主人が何処にも連れて行ってくれないし。


このソファーの後ろには、主人の机がある。

この机は、どうしたことか、足が三本しかない。

主人談によると、これはハエをたたこうと思って、角材を振り回していて、それに当たって、折れたのだそうである。


ハエをたたくのに角材がいるか? と、今でも不思議に思っている。

どうせ、夫婦喧嘩でもして、折ったものだろうと想像する。

その机の上には、本がたくさん置いてあるが、これは横文字ばかりで、私には読めない。

主人は英文学者であるが、猫の私に教育をするのを忘れてしまったのである。


そして、同じ机の上に花瓶が置いてある。

その中には二種類ほど、花が生けてある。

晩秋にしては、美しい色合いの花である。

赤、黄色、そして葉の緑、何処かで見た配色であるが、花の原色と、葉の緑が対比して鮮やかである。


その時、急に扉が開いて、主人が入ってきた。


―― 前編おわり ――   後編につづく・・・


                 筆者  いとう 文龍
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