宮下恵茉・作 十々夜・絵 PHP
「第一章 地味でさえないぼく」には、参った。
おわり会で、豪快なくしゃみが出たとき、となりの席の本田さんから、間違った名前で文句をいわれる。ぼくの名前は柳田一なのに、「ヤマギワくん」なんて呼ばれている。転校してきたばかりの子でもないのにだ。名前さえ覚えてもらえない五年生で、地味な存在なのだ。名前同様に。それでもクラスの女の子に騒がれたい願望もある。だけど、忘れられた存在。
家に帰ると、運命を変える出来事が待っていた。待っていたといっても、とうさんが隣町のゴミステーションから拾ってきた石像の置物が玄関にあったこと。
はじめが、足でける真似をしたら、とうさんはあわてて石像に呪文の言葉を言って、「大精霊様も許してくれる」といった。
とうさんは元大学教授で、民芸品を集めるのが趣味・仕事だった。でも、教授の仕事は無くなり、主夫をやっている。かあさんは超一流企業に勤めていて、世界を飛び回っている。民芸品のお土産も送ってくれるのだ。
はじめのことを教室では無視しているくせに、同級生のきらりは自分の家のように、はじめの家にやってくる。きらりはとうさん目当てで来る。そのきらりが教室ではじめとしゃべらないのは、女子たちに何をいわれるかわからないから。でも、女子たちとはうまくやっている。実際はきらりを苦しめているらしい。その息抜きがはじめの家に来ることなのだ。
くしゃみがひどくて病院に行き、花粉症と診断された。ハウスダストが原因だともいわれた。とうさんのコレクションのせいだと思う。とうさんは民芸品に守られているという。妙竹林な民芸品に精霊が宿っていて、家族を守ってくれているというのだ。とうさんことばに腹を立て、「だから、どこの大学でも雇ってもらえない」とまでいってしまう。
とうさんに腹を立てたまま、自分の部屋に行ったときだ。机の上にきらりがおいていったらしい石像が乗っていた。そして、くしゃみをしたとき、
「ぎょえええええ!」
トロフィーくらいの大きさ、頭が大きくて、横に出っ張った耳、怪しげな模様の入ったつるんとした肌、それが大きな瞳でニタッと笑っていたのだ。
長い角で、ひげを生やしたおじいさんみたいな顔の動物まで出てきた、はじめは逃げ出す。
とうさんに助けを求めたときに、はじめが「精霊人」だといわれる。言葉を知っているとうさんに訳してもらいながら、はじめは“精霊”たちと付き合い始めるのだ。
ラストまでを伏せながら紹介するって、一種の快感だなと初めて思った。うれしいラストが待っている。そこまでを一気に読んで欲しい。
宮下恵茉さま
作品は作者の願望から生まれるということですかねえ。高橋にとっては、遅かりし由良之助です。楽しい本を、シリーズの始まりの本をありがとうございました。
創作日誌
ちっとも創作なんかしていないのに、創作日誌とはこれ如何にという気分。昨日は、リハビリと午後の眼科に行って、疲れてしまった。
今日は病院無しだけど、祐天寺の一作をなんとかしないと。
鹿沼市でクラスターができて、幼稚園、小学校がいろいろ言われているらしい。栃木県では児童文学のメッカだった。コロナで大変らしい。
一平さんから、朝日新聞の切り抜きが来た。ホームセンターでロープを買ったり、病院でもらった薬を貯め始めているとどこかで察したらしい。八代亜紀の歌を歌っているのもいけなかった。♪ボツボツ飲めば〜ボツボツと〜。世の中から「ボツ」という言葉を無くして欲しいなあ。
そんな心境に瀬戸内寂聴さんの言葉、いやあ、おもしろかった。みんな年を取るといろいろやっていたらしい。大文豪も。
てなことに励まされたことにして、手直し、はじめましようか。

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