フェイク・ドキュメントといえば真っ先に思い浮かぶのが『食人族』で、その実写部分のみで構成したホラー版が『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』なら、この作品は、そのパニック版とも云うべき作品になっている。『ブレア〜』がどちらかというと、パーソナルな非常に狭い範囲での映像という捉え方だった事に対して、この作品は、軍が保管している極秘映像という構成(あくまでも表向きは)であるだけに、リアリティは格段に上回っており、その念入りな周到さには感心してしまいました。
そう、何よりもこの作品、そのリアリティ溢れる描写が群を抜いて素晴らしいですな。一体何が起きているのか分からない混沌とした中での恐怖感。何か得体の知れないモノが襲ってきているという恐ろしさ。それがまざまざとリアルに伝わってくるのが凄く、最近の中でも出色の出来栄えだと思いました。勿論、手持ちのカメラによる終始ブレっぱなしのカメラワークやアングル等、非常に見辛く、目が回ってしまうような感覚に陥ってしまうのも正直なところではあるのですが、その一点のみに拘って、一切、第三者目線でのカットを入れていないという辺りに、執念みたいなものも感じて、この徹底した拘りが却って潔くてよかったと思います。
冒頭のチンタラしたホーム・ムービー・シーンが、あまりに退屈過ぎるのがネックかと思わせながら、しかしその後に起きるあの事件を盛り上げる為にはどうしても必要なシーンであり、そしてあの事件が起きてから以後の、とにかく恐い事恐い事。もう、この一言に尽きますな。実際にこういう事が起きると(対象はどうであれ)、大概、このような行動になるのではないかと思わせるに十分な描写で構成されているのにも納得が出来、これ程の恐怖感を味わったのも近来稀にみるって感じで、得体の知れないもの程恐いものはないという、人間が古来から持ち続けてきた特有の恐怖感を徹底描写したこの映画は、パニック映画としても、またホラー映画としても一級品の面白さを持った作品と言えると思います。あ〜、恐かった。 (★★★★★)
Cloverfield
カラー/デラックス・プリント/1.85(パナヴィジョン)/ドルビー・デジタル/DTS/SDDS/85'42"
●なんばパークスシネマ・シアター6/タダ券/満席(4:55からの4回目)

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