イイ映画ですな。こういう、普段あまり知らない職業や仕組みをテーマにした映画って、凄く興味深いですな。知ってるようで知らなかった色んな事柄が分かって、それを一通り描くだけで、1本映画が出来ちゃうみたいな、単純なようでいて、その実、根が深い映画。特にこの映画、ちゃんと起承転結がしっかりしているので、最後まで目が離せませんな。
そういう意味ではこの作品、目の付け所がイイというか、アイデア賞ものですな。何処かの映画祭で賞を獲ったのも頷けるように、全体的に申し分ないんですが、ただ一点、中盤で夫の職業を知った妻が「汚らわしい!」と言って突き放すシーンはどうかと思いましたな。結局最後までそのシーンについての説明がないものだから、ずっとわだかまりが残ったまま最後を迎えていて、凄く不愉快に思ったのですが。そもそもアレはどういう意味で言ったんでしょうか。人の生き死にに関する仕事に就いたのがイヤだったのか、それとも、元からああいう職種に偏見を持っていたのか。
確かに、ある種の誤解を招く職種ではありますが、結局誰かがやらねばならない仕事なんですよね。逆に言えば、人が嫌がる仕事だからこそ、職業として成立している訳で、それなりの報酬も貰える訳ですからな。
以前勤めていた職場で、与えられた仕事に対して同僚が「何でこんなイヤな事をしなけりゃならないんですか?」と、上司に食ってかかっているのを見掛けた事がありますが、その時の上司の「イヤな事をするのが仕事や。だからお金貰っとるんやろ」と返していたのが今でも印象に残っています。確かにその通りですな。人の嫌がる事(一時、3Kなんて言葉もありましたが)をやるから仕事でありお金も貰える訳で、そうでなかったら誰もしないし、それでもやるのは単なるボランティアですからな。ましてやその仕事が、普通の人では出来ない技術や才能が必要なものであれば、尚更仕事としてやりがいもあるだろうし、それなりの報酬(それが見合っているかどうかという問題はさておいて…)も手にする事が出来るだろうし、堂々と誇りを持って良いと思うのですがね。
しかもこの映画の場合、少なくとも、人の為になっているのは間違いない訳ですからな。いや、人の為になっていない仕事なんてのは、この世にありませんな。みんなの仕事は必ず、誰かの為に役立っているんですな。それが目に見えない相手だったとしても。
なので、あの妻の言動には憤りを覚えました。それと、あともう少し、5分〜10分程刈り込めば、テンポも良くなったと思いますな。 (★★★1/2)
カラー/1.85/127'04"
●梅田ピカデリー1/タダ券/ガラガラ(18:45からの最終回)

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