ジョン・カーペンター初期の傑作のリメイク。オリジナル作品に、大して興味が無かったり、大して好きじゃない映画のリメイクの場合は、オリジナルとの比較ってのは、あまりしたくないんですが、大好きな映画の場合だと別。特にこの作品、つまりオリジナルの『ザ・フォッグ』は、カーペンター映画の中では、一番の最高傑作だと思っているので、それがリメイクされたとなると、黙ってはおられませんな。
基本的に、ストーリーは同じ。オリジナル版に対して、ノベライズ的な意味合いのある作品に仕上がっていて、ちょっとだけストーリーを膨らませている感じですね。で、それはイイんですが、問題は、オリジナル版の持っていたファンタジックなイメージがまるで欠けてしまっている事、これは重大ですな。
前作では、アドリアン・バーボー扮するDJが、霧が現れて街に徘徊するのを、ラジオを通して実況するというのがファンタジックなムードを醸し出していたんですが、今回のDJ、クライマックスで仕事を放棄しちゃうんですな。そりゃあイカンだろうと。最後まで実況して、ラストであの名セリフを吐かなきゃいけないのに、現場から逃げ出して、みんなと一緒に教会へ行っちゃうのはアキまへんな。
それと霧について。前作では、物語の発端となる100年前の事件の時から既に、霧が画面を支配していた(霧による船舶事故で処理しようと企んだ)のに、今回は霧は関係なし。なのに、100年後に幽霊が出てくるシーンにはちゃんと霧が発生しているというのは、矛盾しているというか、単に霧を、幽霊を効果的に見せる為に出しているとしか思えないんですな。これは、タイトルに対する違反と共に、オリジナル版に対する冒涜でもありますな。
今回のリメイクは、カーペンター自身も製作に関与しているらしいですが、彼の目が光っているにも関わらずこの状態は、一体どういう事だと…。勿論、リメイクなので、オリジナル版と全て同じにしなくても良いとは思うんですが、前作というか、この映画の持つテイスト自体を殺してしまっては、あまり意味が無いように思う訳です。
それにしても…、あのラストは何なんですかねぇ。新解釈を加えているのは分かるんですが、あまりに唐突ではないかと…。伏線も何もあったもんじゃないですなぁ。(★★)
The Fog
デラックス・プリント/テクニカラー/2.35(S35)/ドルビー/dts/SDDS/99'38"
●ユウラク座/金屋券(\700)/約15人(9:00からの6回目)

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