トビー・フーパーが32年前に放った狂い咲きの1本『悪魔のいけにえ』が、21世紀になった今もこうしてリメイク、さらに続編として綿々とその歪んだ血が受け継がれているのは、エラい事ですな。もっとも、ハリウッド映画の現状から鑑みるに、これは当然の帰結でしょうけど。ようするに、単なるビジネスとしてセレクトされた題材であるだけで、話題になれば(=儲かれば)別に何でもよかったんでしょうねぇ。『オーメン』や『サランドラ』もリメイクされたし、『エクソシスト』や『バットマン』も“ビギニング”したし。
という訳で、2年前のリメイク版に続いて、今回は前日談ですか。考える事は皆同じですな。まぁ、後日談よりは前日談の方が作り易いんでしょうな、きっと。ナンせ、同じキャスティングでそのまま作れますから。前作で死んでいても、再登場して貰えるし。
で、レザーフェイスの出生の秘密が明らかにされるというので、ワクワクしながら観たんですが、全体的には面白かったです。意外にちゃんと作られてあって、シリーズのテイストもしっかりと保たれていたように思いました。でも、よく考えてみたら、このレザーフェイスってのは、前作の『テキサス・チェーンソー』のレザーフェイスであって、フーパー版とは無関係なんですな。フーパーに断りも無く、勝手にこんな話をデッチ上げて…と思っていたら、フーパーさん、ちゃんと製作にも関与してたんですな。納得しました。
それにしても、フーパー版から数えて、これが通算6本目になる訳で、よくもまぁ、6回も同じ話で映画を作りますなぁ。我々は6回も同じようなストーリーで、同じようなシーンを見せられている訳で、よく飽きませんな。因みにワタシは、1作目から順番に全部観てます。フーパーの2作はともかく、あとの4本は、どれもみんな似たような内容=仕上がりというのが大方の印象で、あまり記憶に残りませんなぁ。観ている時はそれなりに面白かったけど。
まぁフーパーの1作目が最高なのは誰もが認める事として、2作目もなかなか良かったですな(因みにワタシの1986年度のベスト1作品)。フーパー自身が、シリーズにちゃんとケジメを着けたのと、デニス・ホッパーの怪演が光っていたのが最高だった訳ですが、あとは、3作目でケン・フォリーが、銃で一家を皆殺しにするシーンがスカッとしたのと、4作目に無名時代のレニー・ゼルヴィガーとマシュー・マコノヒーが出ていた事ぐらいしか印象に残っていませんな。
今回はリメイク版の前日談ですが、話は前作に繋がっていくという時点で、あの一家が誰も死ぬ訳はない訳で、そういう意味では、“苦しめられていた犠牲者が逆襲してスカッとさせてくれる”ストーリーになってくれる筈もなく、これは致命的ですな。この手のホラー映画特有のカタルシスが無い事が最初から判っているというのは、ナンとも辛いものがありますな。なので、ラストのドンデン返し(かな…?)も、予測できるというか、ああならないといけない訳で、そういう意味では、苦しい展開であった事も事実ですな。
しかしまぁ、レザーフェイスがどうしてああいう性格になったのかという事と、あの父親がどうして保安官をしてられるのかという、前作からの疑問が解消された事だけは、今回の取柄ではありました。でも、テキサスがいくら田舎だからといっても、保安官が一人行方不明(次の赴任先に行ってない)になったのに、そのまま放置されているというのは如何なものでしょうか。前作でもラストで捜査中の警官が襲われていたり、リメイク版はやたら警官が犠牲になる傾向があるようですな。 (★★★)
The Texas Chainsaw Massacre: The Beginning
テクニカラー/デラックス・プリント/1.85(カメラbyパナヴィジョン)/ドルビー/dts/SDDS/89'20"
●道頓堀東映パラス/タダ券/約20人弱(6:50からの最終回)

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