シェームズ・ボンド役はショーン・コネリーに限る、と思い始めてから幾年月。時は流れて世紀は変わり、映画も変化して映画館も衣替えが行われた今、6代目ボンドを迎える時がとうとうやってきてしまった…。嗚呼…。
「暗い」「地味」「無名」「小汚い」「チビ」「オジン」「ハゲ」「悪役顔」「キショい」「キモい」「誰…?」…等々、前評判が散々だったダニエル・クレイグでしたが、完成した第21作目の007を観て納得。6代目襲名はまずは成功ですな。ボンドの魅力云々よりもまず、スパイ・アクション映画として面白く仕上がっていたのがその要因でもありますな。本当にこれが正統派スパイ映画かと呼べるかどうかはともかく、アクション映画としては及第点…、どころか、最近のボンド映画の中でも出色の面白さだと、観ていて興奮しましたです。
誰が言ったか知らないけど“ボンド役としては最高”と呼ばれた前作までのピアース・ブロスナン作品は、ナンか印象が薄いんですな。映画はつまらなくはなかったですが、今の時代とジェームズ・ボンドのスパイとが上手く溶け合っていないようで、実際、ボンド以外にもボンド級の活躍をするヒーローが何人も出てきた事もあり、いまいちパッとしなかった印象があったんですが、その点この作品は、00要員になったボンドが最初に行う小さな仕事(金額はデカいけど)に焦点を絞った点が項を奏した事もあり、ピリっと決まった映画に仕上がっているのが良かったですな。
シリーズの約束事を一旦リセットしているので、最近流行の“エピソード1もの”かと心配していたんですが、時代的な流れは現代に通じているので一安心。まぁいわば、00要員の成り手が無くなったので、新人としてクレイグが抜擢されての訓練&襲名編としてみれば、面白く仕上がっておりました。ボンド役に成りきれていない辺りのぎこちなさも、まだまだ慣れない初々しさが出ていると思えば、新鮮味もありますしね。
それにしても、後半が心理戦一辺倒になる地味な原作をよくぞここまで派手派手しく描いたと思うと、これがボンド映画2本目となるマーティン・キャンベル監督の演出は大したものですな。ただ、多少の荒削りな部分(説明不足な点等)が目立ったのはタマに傷で、ポーカー戦の緊迫感が途切れ途切れになる辺りにもう一工夫欲しかった気がしますが、まぁイイでしょう。あと、ボンドに毒を盛ったのは誰なのかが、気になった程度ですかな。
しかし、ボンド役がいきなり変わるという事に、もう少し具体的な理由が欲しいものだとは思います。コネリーやムーアはともかく、ダルトンやブロスナンがいきなり降板させられるのは腑に落ちないので。事情は色々あるんでしょうけど、降ろすなら降ろすで、“最後の1本”として、映画の中で決着を着けて幕を引いて頂きたいものですな。 (★★★★)
Casino Royale
カラー/パナヴィジョン(S35)2.35/ドルビー/DTS/SDDS/143'17"
●梅田ピカデリー3/タダ券/ガラガラ(7:25からの最終回)

1