2010/8/20

皇紀2600年祝俸曲  SPレコード


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Polydor Japan S-5001-A.B S-5002-A.B 78rpm 1941
wax.1086V2 GE5.1087 GE5.1088 3/4 GE5.1089 GE5



この曲は、皇紀2600年に辺る1940(昭和14)年に発表されたものである。この記念演奏会は、「恩賜財団紀元二千六百年奉祝会」(総裁・秩父宮雍仁親王、副総裁・近衛文麿、会長・徳川家達)と「内閣二千六百年記念祝典事務局」が考案した計画だったが、肝心の奉祝会に音楽に精通した人間が居なかったので人選に苦慮したそうである。そこで急遽音楽家や日本放送協会の洋楽担当者に協力を求め、スタッフとして従事して貰ったとの事だ。当時の友好国に作品の依頼をしているが、独逸のリヒャルト・シュトラウス以外では、次の作曲家作品が、奉納されている。


ブリテン(イギリス、当時アメリカ在住)
           − シンフォニア・ダ・レクイエム(鎮魂交響曲)
ピツェッティ(イタリア) − 交響曲イ長調
イベール(フランス、当時イタリア在住) − 祝典序曲
ヴェレッシュ(ハンガリー) − 交響曲(第1番)



国内作曲家の作品は、次の通りである。

伊福部昭:交響舞楽「越天楽」
橋本國彦:交響曲第一番
信時潔:交声曲「海道東征」
箕作秋吉(当時は秋吉元作):序曲「大地を歩む」
清瀬保二:「日本舞踊組曲」
大木正夫:「羽衣」
大沼哲:「大歓喜」
斉藤丑松:行進曲「大日本」
陸軍戸山学校軍楽隊:行進曲「大日本」
山田耕筰:歌劇「黒船」(初演時は「夜明け」)
市川都志春:交響組曲「春苑」
宮城道雄:祝典箏協奏曲、寄櫻祝、大和の春
大澤壽人:交響曲第三番「建国の交響楽」、交声曲「万民奉祝譜」
                    交声曲「海の夜明け」
菅原明朗:紀元二六〇〇年の譜、交声曲「時宗」
尾高尚忠:ピアノ・ソナチネ
中山晋平:新民謡「建国音頭」
柳田義勝:新民謡「建国舞踊」
飯田信夫:舞踊曲「仏教東漸」



尚、邦人作曲家の作品は、この行事以外の演奏と成り、式典では演奏されていない。奉祝曲演奏会は、1940年12月7日・8日に東京の歌舞伎座で松岡洋右ら来賓向けの招待演奏会が行われている。指揮者は、次の通りである。


イベール:山田耕筰指揮
ヴェレッシュ:橋本國彦指揮
ピツェッティ:ガエターノ・コメリ指揮
R.シュトラウス:ヘルムート・フェルマー指揮



その後、一般向けの演奏会が、12月14日と15日に行なわれた。12月26日と27日には大阪歌舞伎座で一般向け演奏会が開かれている。全国放送は、12月18日と19日である。(18日:イベール、ヴェレッシュ。19日:ピツェッティ、R.シュトラウス)だが、放送会館第一スタジオからの中継だった。ブリテンの作品は、題材が祝典向きでは無いと言う理由で外されたと思われていたが、曲の規模が大きい為に練習日数が、間に合わなかったのも真相らしい?その内に敵国に成ったのも原因である。演奏は、紀元二千六百年奉祝交響楽団だが、メンバーは、新交響楽団、中央交響楽団、東京放送管弦楽団、宮内省楽部、東京音楽学校、星桜吹奏楽団から厳選され、総勢164名で編成された。齋藤秀雄は、このオケのトレーニングを担当している。


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尚、このレコードだが、大きな行事だったので解説書も充実しており、仔細に亘って当時の様子が鑑見れるのが在り難い。


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曲は、リヒャルト・シュトラウスの日本建国2600年祝典曲.作品84である。この曲のレコーディングは、自作自演盤の他にヘルムート・フェルマーが指揮した奉祝交響楽団のレコードが、日本コロムビアで録音され、発売もされている。フェルマーの演奏は、説明的で解り易いとの評価があるが、私は聴いた事が無いので、その件に関しては答え様が無い。余談だが、ヘルムート・フェルマーは当時、東京音楽学校の教授を務めていた。この曲については、R・シュトラウスは、日本音楽のモティーフを全く使用していないのに関わらず、日本精神の三大理想を明確に表現している点を評価している。


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さて、自作自演のこのレコードだが、1940年収録と在るだけで日付が不明だ。楽団は、バイエルン国立管弦楽団である。解説に在る当時の日本ポリドールで洋楽課長を務められた磯村政美の証言では、録音に関しては相当、難航したそうである。当初、日本ポリドールでは、楽団をベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でと希望した様だが結局、断念するに至った。高齢の為に住居を構えるミュンヘン南奥のガルミッシュからベルリンに向い、大編成のオケに対し新作の猛練習は、老齢の大家には、負担が大きかったからである。そこで、ベルリンの録音スタジオを断念し巨匠の地元であるミュンヘン国立放送協会の(現バイエルン放送協会)大スタジオで収録を決めたが、独逸グラモフォン社の技師二名が下見に行った処、音響上の不備を発見し、録音会場の変更を余儀なくされたと在る。この曲は、後半に鐘の鳴る箇所が在るが、日本に対しての祝典曲なので、東洋的な音色が求められ苦慮されたとの事だ。そこでミュンヘン国立博物館に相談した様だが、その縁で、儀式用の大ホールを使用する事が可能になったそうだ。尚、鐘の音は、当時の最新電子楽器であるトラウトニュウムを使う事で解決した。と言う事で、私も本物の鐘だと思って聴いていた音が、電子楽器で在った事が判明して、意外な発見をしたのは収穫だった。


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結局、その様な理由で、ミュンヘンで収録する事に成ったが、作業は念密を極めており、音響のチェックに原盤を試聴する際は、面倒でも本社に持ち帰り、スタンパーを起してプレスをしたテスト盤で検討したとの事である。やはり出張用の機材だったので、音質を危惧したと思われる。この作業でオケが費やした時間は、13時間であった。本番は、2日に亘り、収録に要した時間は、7時間に及んだそうだ。当時の巨匠は、76歳であった。さて演奏だが、曲其の物の評価は低い。何故なら巨匠は、祝典用の曲は苦手で、この企画自体も乗り気じゃ無かったとの証言も在る。その為、だらだらとライトモチーフが、羅列する印象しか無く内容も薄い。しかし巨匠の指揮者としての腕前は確かなもので、素朴ながら流麗な見事なバランスでオケを鳴らす。音色其の物にも品が在り、淡々と進む音楽は、正に一流である。これは、通向けの演奏である。





7



2014/1/15  7:13

投稿者:ひまうま

注意深く探すとネットオークションでは、たまに見る事が在ります。

R・シュトラウスの自作自演の78回転盤に関しては割とプレス数が多いのか、比較的見つけやすいです。

法人作曲家作品のレコードは、やはり探すのには難儀します。

2014/1/14  22:48

投稿者:百瀬 稔

リストアップされた曲を見ると戦時中であることがわかりますが、聴いてみたくなりました。このレコードは入手困難かもしれません。

2013/1/9  17:57

投稿者:ひまうま

コメントと評価、ありがとうございます。

早速、ブログも拝見致しました。

内容にも感心致しました。

時々お邪魔致します。

2012/12/28  21:57

投稿者:Bruxelles

はじめまして
このペイジにリンクを貼らせていただきました。大変詳しい紹介と貴重な動画の貼り付け、有難う御座いました。作品がたくさん届いたことは知っていましたが、今回初めて聞きました。

http://goodlucktimes.blog50.fc2.com/blog-entry-431.html

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