中国広東省の珠江(東莞市太平鎮造船廠)に有る造船所の写真です。撮影時期は1980年代で、木造動力船かと思われる。太平鎮とは現在の虎門市を言え、有名なアヘン戦争の激戦地として知られます。地図で見れば香港と広州市のほぼ中間に位置し、貿易の中継地(商業都市)として知られます。江戸時代の千石船が暴風雨で遭難し、日本に戻る時の「日本人漂流記」の中にも、この虎門の地名を見る事が出来ます。
中国は広大ですが全体的に俯瞰すると、古来から港湾を中心として栄えた都市部から成立しているのです。広東省は中国の南方に位置しているが、その中心地が広州で、その衛星都市的役割をしたのが虎門鎮(太平)で有ったのです。アヘン戦争時の林則徐が英国から没収したアヘンを石灰と塩で焼却したのもこの虎門鎮で有った。さらには英国の不意打ちに有って、要塞が陥落したのも虎門鎮で有った。
この様な歴史的背景の有る虎門鎮で有るから、造船所が建てられるのは至極当然では有った様です。写真には「東莞市太平鎮造船廠」と有り、恐らく生産合作社としてスタートしたかと思うのです。写真の船上に小屋の骨組が見えるから大型漁船かと思われる。この都市部と周辺には、いわゆる「水上生活者」の残影が現在でも見られます。
この辺は香港からは100Km以上離れていますが、潮の干満が見られますので、船が完成した時の進水等は簡単に出来たかも知れない。潮の干満は広州市より更に上流の広西省まで見られます。

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