著者の門馬直衛(明治30年〜昭和36年)は福島県原ノ町(現南相馬市)生まれで、東京帝国大学法学部を卒業している。法学部卒業なら官僚、政治家、学者等に進むのが常道だが、
生まれつきから音楽を愛してやまず、畑違えの道に進み、「月刊楽譜」等の雑誌編集に携わると共に、西洋音楽研究に没頭し、やがては武蔵野音楽大学教授に就任したと言う。
明治のお生まれですから、日本には未だ西洋音楽が十分浸透されて無く、彼の発表する著書や翻訳、編纂書等が先導的な役割を果たしたのです。その歴史的業績に対する評価は、現在でも高いと言われます。
写真は、その音楽活動での代表的な著作で、名著とされる「音楽の美と鑑賞」です。出版は戦後の昭和23年で、雄鶏社と書かれています。日本の戦後とは、国民は食うや食わずの貧しい生活で、物資も少なく、この著書は「
わら半紙」で印刷されています。現在では、酸化も進みページを捲るのも怖いようです。この様な書は、スキャナーで呼び込み後世に残すべきだろう。
彼は「はしがき」に言う。この本は一般人、特に若い人の音楽的教養を高めるようとして書いたものである。、、、
音楽の教養で一番大切な事は、音楽の考え方、批判の仕方である。これは結局、音楽の本質がどこに有るかのか、音楽の美がどうゆものかと言う事で有る。、、
この「はしがき」を読む限り、
西洋音楽の入門書のようですが、音楽の本質を整然と書かれていて、音楽美学に関する学識が窺われるようです。但し、音楽が好きで好きで堪らない者には、有用なのでしょうが、素人の私には、くり返し読んでも手強いものです。本書は下記の十章から成り立っています。
はしがき
第一章:音楽の美
第二章:基本的な美
第三章:音色の美
第四章:形式の美
第五章:内容の美
第六章:様式の美
第七章:器楽曲の美
第八章:声楽曲の美
第九章:演出の美
第十章:音楽の研究
索引

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