「伊坂幸太郎」の小説
『魔王』を読みました。
『死神の精度』に続き
「伊坂幸太郎」作品… 6作連続で
「伊坂幸太郎」作品ですね。
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本年度本屋大賞受賞作家による最大の問題作不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する
『魔王』と、それと対をなし、静謐な感動をよぶ
『呼吸』。
2000年代最注目作家が挑戦し到達した話題作
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著者自身が
「自分の読んだことのない小説が読みたい。そんな気持ちで書きました」と語る作品だけあって、正直、既存の枠組みではジャンル分けできないような作品、、、
どちらかと言えば、SF的な要素やファンタジー的な要素が強く感じましたね。
本作品は、二編の中篇で構成されています。
■魔王
■呼吸
『魔王』は、思った事を相手に喋らせることができる不思議な能力
≪腹話術≫を持っていることに気付いた
「安藤」が、その能力を使って世の中の流れを変えようとする物語、、、
カリスマ性を持った野党党首
「犬養」のファシズムを連想させる言動と大衆を煽動させる影響力…
「犬養」が、将来、権力を強化することに危機を感じた
「安藤」は
≪腹話術≫を使って、
「犬養」を失墜させようとささやかな抵抗をするが、
「安藤」とは別な特殊能力を持った人間により封じ込められます。
「安藤」が
「犬養」の演説会場に向かう数日前から、
「安藤」の周辺に
「千葉」という男が現れるところが、
「安藤」の将来を暗示していましたね。
(
『死神の精度』を読んでいる人にしかわからない内容ですが… )
『呼吸』は、
『魔王』から五年度の物語、、、
「安藤」の死後、絶対にじゃんけんに負けないことから、ある能力に気付いた弟の
「潤也」は、兄の意思を継ぐため、その能力を駆使して財産を増やす。
その能力を使うところよりも、猛禽類の調査をしながら、兄(の心)と交流するシーン(
『魔王』の中で兄の目線からも描かれているシーンなのですが… )の方が印象的でした。
読む前は、
「安藤」兄弟が特殊能力を駆使して世界を変える、、、
というようなエンターテイメント性の高い作品を想像していたのですが、実際は全く違っていましたね。
大きな流れに抗するため、小さな一人ひとりに何ができるのか… 難しい問題を問いかけられる、奥の深い、独特の雰囲気を持った作品でした。
わかり難い部分もあり、作者の意図を十分に理解できているとは思えませんが、、、
作品を通じて、大きな流れに飲み込まれず、自分の考えを信じることの大切さを感じることができる作品でした。
自分でも理由はわからないし、上手く表現できないのですが… 心地良い余韻が残りましたね。
印象に残る
「潤也」の言葉を記しておきます。
「兄貴は負けなかった。
逃げなかった。
だから、俺も負けたくないんだよ。
馬鹿でかい洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」
胸を打たれましたね。
以下、主な登場人物です。
「安藤」
「魔王」の主人公。会社員。
交通事故で両親を失ってから、弟の潤也と二人で暮らしている。
幼少期に見たアメリカのドラマ『冒険野郎マクガイバー』の影響で、「考えろ」と呟きながら考察する癖があることから考察魔と呼ばれる。
自分が思った事を相手に喋らせることができる『腹話術』の能力に気付き、様々な要因が重なり一人の男に接近することを決意する。
「安藤潤也」
安藤の弟。
明るく、自分の考えを持ち芯の強い所がある。
「呼吸」では詩織と結婚し、仙台に移住し猛禽類の調査をする仕事をしている。
「魔王」の話以後、じゃんけんに負けなくなった事から、ある能力に気付く。
「詩織」
潤也の恋人。
「呼吸」の主人公で、その時には潤也と結婚し、ともに仙台に移住し、派遣社員として働いている。
電気を消す音を聞くと、たとえ睡眠時であっても「消灯ですよ」と言う癖がある。
「犬養舜二」
未来党の党首で国会議員。
政治に興味のない若い世代など、人を引き付ける魅力を持つ。
テレビの討論番組で、「五年で立て直す。無理だったら私の首をはねろ」という発言の旨をする。
「呼吸」では内閣総理大臣になっている。
「ドゥーチェのマスター」
安藤が通うドゥーチェというバーのマスター。
「島」
安藤の大学時代の友人。
電車の中で、偶然安藤と再会する。
大学時代は長髪だったが、営業社員をしていた再開時には「暑いから」という理由で短髪になっている。
「呼吸」にも登場し、未来党の党員活動をしている。
その時には、再び長髪になっている。
巨乳と女子高生が好き。
「満智子」
安藤の同僚。
安藤の隣の席を使用している。
「平田」
安藤の勤める会社の先輩。
四十代前半で離婚歴のある独身男性。
気が弱い。
「アンダーソン」
安藤の友人。
日本人のOLと恋に落ち結婚。
会社を辞め、英会話教室を営んでいる。
アメリカ出身だが、日本に帰化している。
日本名はあるが、誰もその名では呼ばない。
妻とは帰化が認められた半年後に死別している。
「田中」
サッカー日本代表の中盤の要と言われる選手。
日本対アメリカの親善試合の後、アメリカ人によって殺害される。
「蜜代」
「呼吸」に登場。
詩織の同僚。
詩織からは「蜜代っち」と呼ばれ、詩織の事を「詩織っち」と呼ぶ。
憲法九条の改正に批判的な意見を持つ。
「赤堀」
「呼吸」に登場。
詩織の同僚で、一歳下の二十七歳。
憲法九条の改正に肯定的な意見を持つ。
「大前田」
「呼吸」に登場。
詩織の上司。

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