「『ルパン、最後の恋』 モーリス・ルブラン(著), 平岡敦 (翻訳)」
■読書
「モーリス・ルブラン」のミステリー作品
『ルパン、最後の恋(原題:Le Dernier Amour d'Arsene Lupin)』を読みました。
「モーリス・ルブラン」の作品は
『赤い数珠』以来なので約半年振りですね。
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父を亡くした娘を次々と襲う怪事件。
陰ながら彼女を見守る
「アルセーヌ・ルパン」は、見えない敵に苦戦する。
著者が生前に執筆しながらも未発表のまま封印されてきた幻のシリーズ最終作、ついに解禁。
父親の
「ルルヌ大公」が突然自殺し、一人娘の
「コラ」は悲しみに沈んでいた。
そんな
「コラ」を助けるのは、大公から後見を託された4人の男たち。
大公は遺書の中で、じつはこの4人の中に正体を隠した
「アルセーヌ・ルパン」がいる。
「ルパン」は信頼に足る人物なので、それが誰かを見つけ出して頼りにするようにと記していた。
やがて思いがけない事実が明らかになる。
大公は
「コラ」の本当の父親ではなく、
「コラ」は母親がイギリスの
「ハリントン卿」との間にもうけた子だったのだ。
高貴な血をひく
「コラ」は、にわかに国際的陰謀に巻き込まれ、そんな
「コラ」を救うべく、
「ルパン」は動きだすが……永遠のヒーロー、
「ルパン」と姿なき敵との死闘が幕を開ける!
本書には、
「アルセーヌ・ルパン」シリーズの第1作
『アルセーヌ・ルパンの逮捕〔初出版〕』を収録。
従来の邦訳は、フランスで雑誌に初掲載後
「ルブラン」が加筆した単行本収録バージョンでしたが、ここでは雑誌掲載時そのままのテキストを採用。
正真正銘の初登場版は、本邦単行本初収録となります。
あわせて
「ルブラン」のエッセイ
『アルセーヌ・ルパンとは何者か?』も収録します。
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『ルパン、最後の恋』は、
「モーリス・ルブラン」の最晩年、1936年から1937年にかけて執筆されましたが、最終稿には達せず推敲が不十分だったこと等から発表が2012年となった作品で、
「アルセーヌ・ルパン」シリーズの最終作となる作品、、、
その作品に
「アルセーヌ・ルパン」シリーズの第1作
『アルセーヌ・ルパンの逮捕〔初出版〕』と
「ルブラン」のエッセイ
『アルセーヌ・ルパンとは何者か?』、
『バーネット探偵社』の英語版にのみ収録されていた
『壊れた橋』を収録した一冊です。
■ルパン、最後の恋(Le Dernier Amour d'Arsene Lupin)
プロローグ
T アルセーヌ・ルパンの先祖
U カリュプソの洞窟
1 遺言
2 危うし、七億
3 新事実
4 ゾーヌ・バー
5 ココリコ
6 奇妙な男
7 救出
8 不可能な愛
9 敵の隙を突く
10 ルパンの財産
11 尾行
12 話し合い
13 潰えた陰謀
14 罠にかかる
15 対決
16 女が望むもの
≪付録≫
■アルセーヌ・ルパンの逮捕〔初出版〕(L'Arrestation d'Arsene Lupin)
≪付録/エッセイ≫
■アルセーヌ・ルパンとは何者か?(Qui est Arsene Lupin)
■訳者あとがき
≪特別付録≫
■壊れた橋(The Bridge that Broke)
『ルパン、最後の恋』は、
「ルパン」が恵まれない子ども達のために尽力するという新しい
「ルパン」像が示される冒険譚、、、
他の
「ルパン」シリーズと同様に、ミステリー色は薄く、女性とのロマンスを絡めた冒険活劇風の展開でしたね。
子どもと達と協力して敵を追い詰めるシーン等、ワクワクできるシーンもあり、子どもの頃に読んだ
「ルパン」シリーズを思い出しながら読めました。
アジトに仕掛けた、SF的とも思える奇想天外な機会仕掛けは非現実的でしたが… まぁ、ご愛嬌かな。
『アルセーヌ・ルパンの逮捕』は、1905年にフランスの月刊誌
『ジュ・セ・トゥ(Ju sais tout)』に発表された
「ルパン」シリーズ第1作の初出版の翻訳作品、、、
短篇集として刊行された際に大幅な改訂が加えられているらしいので、マニアには垂涎の的となる作品でしょうね。
女性から愛される
「ルパン」… 正体が判明した際に女性が感じる愛情や憎しみ等、心の機微が巧く描かれていると思いました。
『アルセーヌ・ルパンとは何者か?』は、
「ルブラン」がフランスの雑誌
『ル・プティ・ヴァール(Le Petit Var)』に寄稿した
「ルパン」に関するエッセイ、、、
「ルパン」誕生のエピソードや、
「ルブラン」が
「ルパン」に囚われの身になった経緯等が、本人の言葉で綴られているので、興味深い内容でしたね。
『壊れた橋』は、
「ルパン」が私立探偵
「ジム・バーネット」として活躍する
『バーネット探偵社』シリーズの一篇、、、
本国フランスでは幻とされていた作品で、なぜか英語版のみに収録されていた作品(日本語版にも未収録)らしいです… 原文が残っておらず、英語版は早々に絶版になったとかで、長く忘れ去られていた作品とのこと。
一般的な
「ルパン」シリーズでは、謎解き要素が少ないのですが、本シリーズは探偵モノとして謎解きが前面に押し出されている作品なので、推理小説として愉しませてもらいました。
「一切料金はいただきません」という看板を掲げ、依頼者から料金を受け取らないが、事件を解決する中で巧みに関係者から調査料以上の報酬を受け取る(ピンはねする?)という痛快なオチも健在でしたね。
少年の頃に戻った気持ちで読書できました。

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