「『フラテイの暗号』 ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン(著),北川和代 (翻訳) 」
■読書
アイスランドの作家
「ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン」の長篇ミステリ作品
『フラテイの暗号(原題:Flateyjargata、英題:The Flatey Enigma)』を読みました。
「アーナルデュル・インドリダソン」の
『湿地』に続きアイルランド作家の作品… 引き続き北欧ミステリ作品ですね。
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西アイスランドの美しいフィヨルドの湾に浮かぶフラテイ島。
その島からアザラシ猟のため無人島に上陸した少年が見つけたのは、死後かなり経過した男性の死体だった。
死体のポケットには、意味不明の言葉が書かれた紙切れが、伝承を集めた
『フラテイの書』に隠された、災いをもたらす暗号の鍵なのか。
“ガラスの鑑賞”候補作。
アイスランドの島を舞台にした癒やしの北欧ミステリ。
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1960年代のアイスランド西部にある風光明媚なフィヨルドの湾に浮かぶ小さな島フラテイ島を舞台とした物語… 島民たちは、わずかな土地を耕し作物を作り、海で魚を漁り、ひなが巣立ったあとのケワタガモの巣から羽毛を集めて売っては生計をたてている、、、
そんなフラテイ島の外れにある最果て小屋に住む祖父
「ヨウン・フェルティナント」、父
「ヴァルディ」、孫息子
「ノンニ」の男ばかりの一家が、近くの無人の島ケーティルセイ島にアザラシ狩り行ったことから物語は始まる… ケーティルセイ島で
「ノンニ」が、死後かなり経過した様子の男の死体を見つけてしまうのだ。
どうやらこの島に漂着したものの、どこにも行くことができず、衰弱死してしまったらしい… いったいこの男は何者で、どこから来たのか?
平和な島では滅多にない謎の死体… 調査のために本土から地区長代理の青年
「キャルタン」が派遣されてきた。
島の教会の会衆代表の
「グリームル」、女医の
「ヨウハナ」とともに問題の遺体を調べた
「キャルタン」だったが、遺体のポケットから
「この本の所有者はそれがしこと、ヨウン・フィンソンなり……」という文と、39の無意味な文字の羅列が書かれた紙が出てきた…
「ヨウン・フィンソン」とは17世紀の人物で、アイスランドの伝承を集め記したサーガ
『フラテイの書』をビショップに寄贈した豪農らしい、、、
その
『フラテイの書』には、解読した者に災いをもたらす暗号が隠されているというのだ… 亡くなった人物は、その暗号を解こうとして、呪いにあったのか?
その後、亡くなった人物はデンマーク人で大学教授の
「ガストン・ロン」ということが判明するが、死に至った経緯はなかなか明らかにならない… フラテイ島にはレイキャヴィークの新聞記者
「ブリンゲイル」がやってきて、独自に調査を始める、、、
しかし、その
「ブリンゲイル」が墓場で背中を裂かれて肺を体外へ引っ張り出された状態で発見される…
「ガストン・ロン」と
「ヨウハナ」の父で元写本研究者の
「ビョルトゥン・スノーリ・トルヴァルト」には確執があったことから、
「ガストン・ロン」の死については
「ヨウハナ」の嫌疑の眼が向けられ、
「ブリンゲイル」の死についてはアリバイが証明できないことから、容疑は
「ヨウハナ」と
「キャルタン」に向けられるが、終盤、事実が次々と判明し、意外な真相が明らかになります。
「ガストン・ロン」の依頼を受けた、認知症の
「ヨウン・フェルティナント」の行動や、
「ブリンゲイル」の言葉を忠実に実行した教会の寺男
「コルマウクル・コルク」の行動が、物語を複雑にしてしまっていたんですね、、、
いずれも、意図的な殺人ではなく、不幸な事故、不慮の事故が原因だったとは… そして、二人には血のつながりがあったなんてなぁ。
でも、
『フラテイの書』に隠された暗号は、二人の死の謎を解く鍵にはならなかったですね… もう少し、双方が関連すると、もっと面白かったかも、、、
「ヨウハナ」と
「キャルタン」が、過去の辛い体験を乗り越えて、二人の未来を築いて行こうとするエンディングは良かったですけどね。
以下、主な登場人物です。
「グーズヴァルドゥル(ヴァルディ)」
最果て小屋の住人
「ヨウン・フェルティナント」
ヴァルディの父親
「ノンニ」
ヴァルディの息子
「エトリザグリムル・エイナルソン(グリームル)」
フラテイ教会の会衆代表
「インキービョルク(インバ)」
グリームルの妻
「ホクニ」
フラテイ小学校教諭
「ヨウハナ・トルヴァルト」
女医
「ビョルトゥン・スノーリ・トルヴァルト」
ヨウハナの父、元写本研究者
「コルマウクル・コルク」
教会の寺男
「グズリーズル」
コルマウクル・コルクの妻
「ハンネス」
フラテイ教会牧師
「アルフリーズル(フリーザ)」
ハンネス牧師の妻
「スティナ」
フラテイ島の郵便電話局長
「グズヨウン」
知恵の館の住人、インキービョルクの弟
「ベンヤミン・グズヨウン(ベンニ)」
グズヨウンの息子、ロウサの兄
「ロウサ」
ベンニの妹
「ヒルドゥル」
グズヨウンの妻
「アウスムンドゥル(アウシ)」
雑貨屋店主
「シーグルビョルン(シッビ)」
北のはずれ農場の主
「ハーフディス」
シーグルビョルンの娘
「ハットビョルク」
最奥荘の住人、図書館の鍵を預かる老女
「グズルン」
ハットビョルクとシーグルビョルンの親戚
「スヴェンニ」
ハンネス牧師の手伝いの少年
「キャルタン」
地区長の代理
「ガストン・ロン」
デンマーク人、大学教授
「ブリンゲイル」
レイキャヴィークから来た新聞記者
「フリズリック・エイナルソン」
レイキャヴィークの大学教授
「エイナル」
フリズリックの息子
「クリスティン」
フリズリックの娘、医師
「アウルニ・サカリアス」
レイキャヴィークの詩人、作家
「ダーグビャルトゥル・アウルナソン」
レイキャヴィーク市警察刑事
「インギムンドゥル」
レイキャヴィーク市警察刑事
「ルーカス」
レイキャヴィーク市警察鑑識係
「マグヌス・ハンセン」
レイキャヴィーク市監察医

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