「沢木耕太郎」のノンフィクション作品
『凍』を読みました。
「沢木耕太郎」作品は、一昨年の10月に読んだ
『深夜特急〈3〉インド・ネパール』以来なので1年半振りですね。
-----story-------------
美しき氷壁に挑む。
最強
「山野井夫妻」を待つ魔の高峰。
胸を打つ人間の絆、奇跡の登山行。
講談社ノンフィクション賞受賞。
解説:
「池澤夏樹」
最強のクライマーとの呼び声も高い
「山野井泰史」。
世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。
だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった――。
絶望的状況下、究極の選択。
鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。
-----------------------
久しぶりに
「沢木耕太郎」のノンフィクション作品を読んだのですが、相変わらず読みやすかったですねぇ… そして、リアリティがあるんですよねぇ、、、
作品の対象となる人物の記憶を引き出すインタビューの手腕と、その断片的な情報を、ひとつのストーリーとして語る技術は、素晴らしい伎倆だと改めて感じましたね…
「沢木耕太郎」が
「山野井泰史・妙子夫妻」と非常に近い距離感で話を聞けているんでしょうね。
■第一章 ギャチュンカン
■第二章 谷の奥へ
■第三章 彼らの山
■第四章 壁
■第五章 ダブルアックス
■第六章 雪煙
■第七章 クライムダウン〈下降〉
■第八章 朝の光
■第九章 橋を渡る
■第十章 喪失と獲得
■終章 ギャチュンカン、ふたたび
■後記
■解説 池澤夏樹
世界的クライマー
「山野井夫妻」の、ヒマラヤの難峰ギャチュンカン(7,952メートル)への挑戦を描いたノンフィクション… 序盤は、二人が登山を始めたきっかけや、徐々にクライミングに魅せられていった背景から、大規模で組織立ったチームを編成して行う極地法と、サポートチームから支援を受ける事はなく装備に極力頼らず、クライマーの力にのみ頼ることを最重要視するアルパインスタイルの登山スタイルの違いや、登山道具・登攀技術の解説等にページが割かれ、
「山野井夫妻」のことを知らない読者や、登山経験のない読者でも、自然に入り込めるような展開、、、
そして、その後は壮絶極まる9日間のギャチュンカン北壁への挑戦へと進んでいきます、
1日目、ベースキャンプから5,900メートルの取りつき点まで行き、
2日目、16時間かけて7,000メートル地点まで登ってビバーク、
3日目、7,500メートルまで登ってビバーク、
4日目、頂上を目指すが体調の悪かった
「妙子」はビバーク地点で待つことにして
「泰史」が登頂、
「妙子」のところへ戻る、
5日目、7,200メートルまで降りて幅わずか10センチの棚でビバーク、ビバーク中に雪崩に襲われる、
6日目、下降の途中で雪崩に襲われ
「妙子」が滑落、何とか確保し、午前3時からブランコ状態で朝を待つ、
7日目、ようやく
「泰史」が5,900メートルの取りつき点に到着、遅れて
「妙子」も降りてきて一泊、
8日目、午前2時まで歩くがベースキャンプまで到達できず一泊、
9日目、ベースキャンプに戻る、
と、これだけでもどれだけの困難を伴ったか想像できると思いますが… 平地の三分の一の酸素濃度の中、悪天候に阻まれ、雪崩に遭遇し、凍傷にかかり、高山病に悩まされながら、垂直に近い雪と氷と岩を登って、降りて、無事に生還するという二人の不屈の戦いには、本当に驚嘆させられましたね。
この登山行で、
「妙子」の手足20本の指のうち、全く切っていないのは、左足の小指と薬指の2本だけになり、
「泰史」も両手の小指と薬指、左手の中指、右足の指全てを失いましたが… この後もハンディキャップを前提としつつ、クライミングを続けているそうです、、、
特に
「妙子」は、両手の指が根元から全てない状態でのクライミング… 日常生活でさえ困難な状況なのに、山へ挑み続ける姿勢には、頭が下がる思いです。
絶望的な状況に置かれた二人の精神面でのタフさは敬服に値するほど… まさに偉業ですね、、、
面白くて、読後の興奮が、なかなか醒めない… 秀逸な人間ドラマでした。

0