2019年の幕開けはサスペンス 映画の名作で――『恐怖の報酬』  

油田の火災を消すために、少しでも揺れたら大爆発するニトログリセリンを、荒くれ男たちがおんぼろのトラックで運ぶ――。

1954年のフランス映画の傑作をウィリアム・フリードキンが1980年に再映画化した『恐怖の報酬』が、このたび未公開シーンを付け加えた完全版でリバイバル公開されました。

この作品、むかしテレビの映画劇場ではよく放映されてましたが、スクリーンで観たことはありませんでした。一度大画面で見てみたかったので、今年に入って観る一本目の作品として劇場へ足を運びました。

映画は危険なニトログリセリンを運ぶ仕事を引き受けたならず者たちや、彼らが走らせるスクラップ同然のトラック、暴力的ともいえる南米の大自然を武骨なタッチで描きます。1954年のフランス版はモノクロですがフリードキン版はオールカラーで迫力も倍増です。

今回の売りとなっている未公開部分は冒頭のおよそ40分ほど。
イスラエル、フランスのパリ、アメリカのニュージャージーなど世界各地を点々と場所を変えながら、男たちが舞台となる南米の地に追われてくるまでの事情を描きます。

そしていよいよ南米の架空の国に物語が移りますが、この描写がすごい。

ボロボロの飛行機が着陸する舗装も満足にされていない飛行場。イミグレーション(出入国審査カウンター)は掘っ立て小屋。滑走路の隅に機体の破片か何かが転がっています。

主人公たちが巣食うスラム街の、貧困と人間の欲望が渦巻く風景。これもすごい。

油田火災の犠牲者を運んできたトラックを、黒光りした肌の現地人が取り囲む。怒りのこぶしを振り上げる男たち、泣き叫ぶ女たち。虐げられた民衆のエネルギーを感じさせます。

そして高額な報酬と引き換えに危険な任務を引き受けた男たちが、トラックに乗り込み、ジャングルの奥の火災現場へ向かいます。

トラックのフロントグリルはまるで怪物の顔を思わせ、オイルにまみれたエンジンや足まわり、パーツのひとつひとつをカメラは丹念になめるように映します。荷台に積んだニトロは揺れないように砂にうずめて固定されています。少しの揺れで大爆発するという設定ですが、そのわりにはずいぶん揺らしているような……(笑)

人間を拒絶するような深い緑のジャングルにはさまざまな苦難が待ち受けています。増水した川の吊り橋を渡る名シーン。いまのようにCGも使っていませんが迫力に満ちています。

泥と汗にまみれた男たちは、もはや外見も現地人と変わりがありません。黙々とトラックを走らせ、立ちはだかる障害を乗り越えていきます。交わされる言葉はほとんどありません。言葉に代表される文明や社会のシステムがこのジャングルでは通用しないことを思わせます。言葉よりも行動の方が、ここではずっと重要なのです。

この映画、同じ南米のジャングルが舞台ということもあり、アマゾンの大河を巨大な蒸気船がさかのぼる『フィツカラルド』を連想させます。

『フィツカラルド』もジャングルの奥地にオペラ劇場を建設する夢に取りつかれた男が苦難と闘う物語です。文明社会から来た主人公の着る真っ白なスーツも泥まみれになり、文明が通用しない大自然の荒々しさを思わせます。

『恐怖の報酬』では、巨大な倒木に道をふさがれ、その前でロイ・シャイダーが地面をたたいて悔しがります。『フィツカラルド』同様、人生と苦闘する男の姿が伝わってきます。

目的地にたどり着く直前、ロイ・シャイダーたちは山中にひそむゲリラに取り囲まれ、銃で脅迫されます。言葉も意思も通じない相手から銃を突きつけられる恐怖は、イスラム国家での人質事件が続発した現在のほうが、この作品が公開された当時よりも、ずっと身につまされて感じられます。

おそらく本編だけでは映画の尺としてややもの足りないということで、前日譚のエピソードを追加したのかもしれませんが、個人的には別になくても構わないかなーと感じました。初公開時の大幅カットはやはり正解だったような気がします。

個人的には未公開シーンは二の次で、TVでしか見たことがなかったこの作品をスクリーンで観ることが目的だったので、本編だけでもじゅうぶん満足でした。

2019年第1弾は前回の『ボヘミアン・ラプソディ』につづき、あまり社会問題と関係ない映画をセレクトしてしまいましたが、年初ということで勘弁してください。本年もよろしくお願いいたします。

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written by 塩こーじ

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