「風呂上りの彼女の髪の匂いを嗅ぐと襲いたくなりませんか?」
高また
何故だか判らないが、突然に高またを書きたくなったので書いてみた
そしたら、沖神が短くなってしまったwww
沖神もまだまだなのに、高または尻尾どころか背中の影すら見えていない
ちょっとぐらいのキャラ破綻していても読める、と言う優しい方、読んで下さい
「風邪・・・でござるな」
「うううう」
万斉はまた子の口から引き抜いた体温計の指し示している目盛りを一目にした瞬間、布団の中で唸る彼女に告げた。
「まったく・・・いつも言っているでござろう。
風呂から上がったらしっかりと髪を拭くよう」
彼はそう呆れ気味に呟きつつも、傍らの水の入った桶に手拭いを浸して絞ると、そっと熱で湯気が出てしまっている彼女の額へ乗せる。
「二、三日は大人しく寝ているのが良いでござる」
「そんなっ! ごほごほ」
「興奮すると身体に障るでござる」
起き上がろうとして激しく咳き込んだまた子を無理矢理に布団へと押し倒す。普段なら力の限りに抵抗する彼女だが、体を蝕む高熱のせいで力も入らず、意識も朦朧としているのか、ぐったりとしている。
「まぁ、幸い、しばらくはでかい山場もないでござる」
てきぱきと布団周りに散らかった高杉の隠し撮り写真を片付けながら、尚も唸り続けている彼女を慰める。
「・・・・・・わかったっす」
しおらしく返事をした彼女の汗で湿った髪を撫でる万斉は優しい目をしていた。まぁ、サングラスで傍目からは判らないのだが。
「何か食べたい物はあるでござるか?」
「イクラ丼」
万斉はチョップを手加減して叩き込んだ。
違う理由で湯気が立つ額を押さえるまた子を見て、溜息を漏らした彼はすくっと立つ。
「消化に良さそうで滋養の付くものを適当に作らせるでござる。
くれぐれも大人しく寝ているでござるよ」
「は〜〜〜いっす」
返事だけはいいでござるな、と一人呟いた万斉が広間に戻ると部下の攘夷志士に囲まれてしまう。
「河上殿、木島殿の具合は?」
「医者は呼ばずとも大丈夫なんですか?」
いきなり囲まれて驚かされたが、彼等が組織内の彼女のFCの面々だと気付いた万斉はどうにか興奮している彼等に落ち着くよう告げる。
「ただの風邪でござる。まぁ、最近、少しばかり雑事が多かったから疲れも溜まっていたのでござろう」
手に持っていた桶や体温計の乗った盆を手近の者に渡しながら説明すると、彼等は安心したような表情を浮かべる。
誰も彼も政府や真撰組にマークされるような凶悪人間なのに、妹や娘ほどの年頃の女にこうも振り回されるとは・・・・・・
少々、組織の先行きに一抹の不安を覚えそうになる河上万斉だった。
「とにかく、組織内に蔓延しても困るので皆、また子殿の部屋には近付かないように」
話はこれで終わりだと無言で告げるように、彼はイヤホンを付ける。
取り残された面々は彼女への見舞いの品を何にするか、話し合いを始める者、早速とばかりに街へ走る者、と様々だった。
「ふぅ、中身は野蛮な猪突猛進娘だが見た目は悪くないでござるからなぁ。
なかなかに罪深い魔性の娘でござる」
鋭意製作中のデモCDを聞きながら自室へと思いついた歌詞をまとめるべく戻る万斉。
何故、彼が他の面々のようにまた子に惑わされないかと言えば、確かに自分の言葉の通りに彼女の外見は上の上だと思うし、性格も悪くは無いと思うが全くもってタイプじゃないと言う、至って単純明快な理由からだった。
ちなみに今、落とそうと思っているのは坂田銀時だった。
毎月、一輪のバラと一緒に自作のラヴ・ソングを贈っているのだが一向に返事が無い。いっそのこと、あちらへ出向いて実力行使に移ってしまおうか、そんな妄想をめぐらせる。
それにまた子は高杉に夢中なのだ、どんな色男だろうが金持ちだろうが彼女の心に付け入る隙間など1mmもないと判っている。
仕事に支障さえ無いなら、誰に夢中になろうが個人の自由である。
ジャンジャン金を貢ぎ続ける彼等をわざわざ止めてやる理由も説得してやる義務もない。
「おや?」
ふと前を見れば、また子の思い人その者である、高杉晋助が歩いてくるではないか。
いつもと変わらず、女物の派手な柄の小袖を着込み、煙管を粋にふかしている。
しかし、彼の部屋は逆方向、こっちに何の用があるのだろう?
「晋助」
「まんさいか」
わざと名を間違えてニヒルな笑みを浮かべる晋助を呆れて見やった万斉は溜息を漏らした。
「また子殿はただの風邪でござる。良かったでござるな」
「何だ、その含みのある言い方は?」
「別に他意があるわけではござらん。
ただ、また子殿を汗だくにするほどよがらせた晋助が責任を感じる事はちっとも無いでござる」
「!?」
「まぁ、ヤッた後、ちゃんと服を着てたら風邪は引かなかったかも知れないでござるな」
昨夜の情事が万斉にバレていた事を知り、眉を寄せた高杉だったが、さすがは数々の修羅場を潜ってきた事だけはある。内心の動揺を決して表には出さない、出さないだけで内心では頭を抱えて悶えていそうだが。
「体調管理はそいつの責任だ」
「そうでござるな」
平然と肯定の言葉を頷きと一緒に返され、そっぽをむいてぶっきらぼうな顔に拍車をかけて呟く高杉に万斉はこみあげそうな笑みを抑えながら頷いて見せた。
「じゃあな」
「そうそう、あとでまた子殿に滋養があって消化が良く、一発で風邪が治りそうな食事を持っていかないとならんでござるなぁ」
部屋の扉を閉める瞬間、彼はわざと早足で去ろうとする高杉の背と耳に届くような大声を発し、高杉が驚いて振り返った時、見た者は万斉のしたり顔だった。
「うぅん」
熱に魘されていたまた子は不意に額にひんやりとした何かが触れたのを夢現に感じた。
万斉が熱を測りに来たのだろうか?
すっかりと重くなってしまった瞼をそろそろと開いて見ると、そこにいたのは高杉晋助その人だった。
「・・・・・・晋助さま?」
また子の額に手を当てていた彼はしゃがれた声にぴくりと眉を寄せた。
「起こしちまったか? 悪いな」
汗で湿って、額にべったりと張り付いてしまっている彼女の前髪を手で掻き揚げてやりながら、高杉は口の端を小さく吊り上げる。
あぁ、これは夢なんだなぁと彼女はしみじみ思った。
高杉がわざわざ、自分を見舞いに来るはずがない。
「まだ熱あんな」
「晋助様の手」
「あ、イヤだったか?」
慌てて引こうとした彼の手をどうにか布団から引き抜いた手でそっと握る。
「冷たくて気持ちがイイっす」
「・・・・・そうか」
彼はまた子の言葉に小さく微笑むと、そっと手の甲を額に当ててやる。

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