次に、側室、妾、二号を持ちたがる男の心理について考えよう。
2.側室、妾、二号を持ちたがる男の心理
これは事例としては「夫の浮気相談」という形で現れるものだ。また、妻に知られずに二重生活をしている男もいるものだ。ところが、知らぬは妻ばかりなりで、回りは知っていても妻が気の毒で言えない…というものまである。このような男には、次のような事情がある(順不同)。臨床的にはこれらの組み合わせであることもあり、また単独であることも見られた。
(1) 職場で部下が多い。
(2) 家庭において甘えられない
(3) 極度に自分に自信が無い
(4) 条件母性反射が複数の女に対して成立している
これらを理解するには「甘えの心理」を把握することが必要となる。経験的に知れることとして、人間には次のような性質がある。いつも他者の面倒を見ている人は、たまには自分が面倒を見られたいと望むようになる、と。これは換言すれば、甘えることができない状況では、他者を甘えさせることができない、ということである。ここで「甘え」と「仕事」の関係を明らかにしておく必要がある。
2−1.「甘え」と「仕事」
「仕事」というものは社会的側面において他者を甘えさせることである。「甘える」ということは、自分でできないことではないが他者に依頼すること、である。このような心意が、たとえば食事を毎日自分で作るのが疎ましくなるとたまにはレストランに行きたい、ということになったりする。このような心意の人が多くなると、食事を作ってあげる(甘えさせる)ということが社会的側面において行われれば「仕事」となり、やがては「産業」として成立するようになる。保育所にしたって、建設業にしたって、何でも基本的にはこんなものであろう。
甘えてくる者を適切に甘えさせることができる者がいると、前者は後者に対して「信頼」と「忠誠」の念を抱くようになる。そのような念を持ちつつ、謝礼を前者が後者に支払うこととなる。今度は、後者が前者に甘えることとなる。支払いが適切に行われれば、後者は前者に対して「信頼」と「忠誠」の念を抱くようになる。
2−2.心の構造
上記のような人間の社会的行動つまり「仕事」をきちんと行うには、支えが必要である。仮にそれを行うのがロボットであったとしても、仕事をするためのエネルギーが必要である。人間の心の上記のような意味でのダイナミックな構造は次のようである。
(5)自己実現欲求に基づく行動……|
↑ ↓ |……社会的行動
(4)承認欲求に基づく行動 ………|
↑ ↓
(3)所属・愛情欲求に基づく行動 私的行動と社会的行動の接続
↑ ↓
(2)安全欲求に基づく行動 ………|
↑ ↓ |……私的行動
(1)生理的欲求に基づく行動………|
これは、下位の欲求(1)から順次充足されると自然に次位の欲求が現れ、(5)や(4)の上位の欲求充足活動を行うと、その活動を維持するための下位の欲求の充足が必要となってくる、と考えられることを示したものである。日常的には、仕事に打ち込むと、腹がすき、安らぎを求める、という形で現れる。社会的行動すなわち他者を甘えさせる行動を行うと、それを維持するためのエネルギーを私的行動を行うことで補充するのが人間だということである。
続く

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