残留のためには絶対に勝利が必要だった福岡戦でした。
横浜戦で獲得した勝ち点3も、仙台戦で死守した勝ち点1も、活かすも殺すもこの試合次第。
アウェイ福岡の地で、浦和にかかわる全ての人が渇望した勝利を手にすることが出来ました。
どんな形であっても福岡よりも多く得点し、勝つことだけを求められた試合だったと思います。
試合前から目眩がするような緊張感と、吐き気を覚えるような気持ち悪さとの戦いでした。
何かを賭けた試合であり、最低限の残留という結果を賭けた試合の恐ろしさを肌で感じました。
試合終了後の安堵感は、緊張していた身体と崩れかけた心から全ての力を奪っていきました。
それでもまだ浦和レッズは、2011年シーズンから何かを得たわけではないのです。
最終節を前にして、来季J1で戦う切符を手に入れていない現実に向き合わなければいけません。
最終節は優勝を狙う柏が相手であっても、自力で残留を決めることを強く望んでいます。
レッズのメンバーは仙台戦を戦ったメンバーがそのまま先発。
山形から5点を奪い最下位を脱出した福岡にとっても、絶対に負けたくないホーム最終戦でした。
立ち上がりにいきなりフリーでヘディングシュートを放たれましたが、
その後は前線から激しくプレッシャーを仕掛けてくる福岡を落ち着いていなすように、
パスを回したり、前線にロングボールを蹴り込んでみたり、浦和の意図で試合を動かしていました。
1トップに入ったセルの動きは素晴らしく、福岡DF陣が全く止めることが出来ず、
レッズの攻撃の起点として、梅崎、マルシオが絡んでやろうとしている攻撃ができていました。
セルが粘って折り返したボールをマルシオが枠を外してしまったシュートは決定的でした。
立ち上がりからやりたいことがある程度出来ていることで、
ピッチでプレーをしているレッズの選手たちから、焦りは感じることはありませんでした。
攻め急いで危険な位置で奪われることも少なく、主導権を握った戦いを見せていたと思います。
しかし、ひとつのプレーで流れを完全に失ってしまいました。
右からのロングボールに反応し、相手DFの裏を抜けたセルがGKと交錯し負傷退場。
それまでレッズの攻撃の起点として機能し、相手の脅威だったセルを突然失ってしまいます。
セルの負傷で予期せぬ時間帯から交代出場となった達也は準備不足もあってか、
前線で攻撃の起点になることができずに、レッズの攻撃はその機能を失ってしまいました。
セルの負傷交代から一転して主導権を福岡に渡してしまい、守備をする時間が長くなりました。
セルを失ってほどなく、先制点は無情にも福岡に入りました。
左サイドでボールを繋がれ、PAの外から放たれたシュートは順大の手を掠めゴールに。
今季、先制されると勝ちに持っていくことができないレッズにとっては痛恨の失点でした。
その後、焦って前掛かりになるレッズをコントロールし、福岡が主導権を握りつづけました。
勝利が求められる試合で先に失点を許し、焦るレッズの攻撃は、悉く福岡の守備網にかかり、
前に向かう気持ちが守備の意識を希薄にし、啓太の横のスペースを使われてしまいました。
同点に追いつくよりも追加点を奪われる可能性が大きい危険な時間が続きました。
この時間帯に福岡に追加点を奪われていたら、張り詰めた気持ちが切れたかもしれません。
残留に繋がっている限りなく細い糸に、かろうじて掴まっているような危険な時間帯でした。
選手も、スタンドのサポーターも、深い闇の中で焦燥感を感じる時間が続きました。
そして、それを振り払うかのように声を上げ、祈り、見守ることしかできない自分がそこにいました。
このまま1点リードされたままで前半を終えるかと思われた前半ロスタイム。
柏木の起死回生の同点ゴールが、心の中に広がっていた全ての暗闇を振り払ってくれました。
右サイドの平川のパスを達也が相手DFと競ったボールがゴール前の柏木の足元に。
柏木の放ったシュートはDFに当ってコースが変わり、ゆっくりとゴールに吸い込まれました。
前半終了間際に飛び出したこの同点ゴールが、この日の一番のポイントだったと思います。
綺麗なゴールではなかった。豪快なゴールではなかった。技ありのゴールでもなかった。
それでも柏木のこのゴールが多くの人の希望をつなぐ最も価値あるゴールだったと思います。
U-22代表で直輝も水輝もいない、頼みのセルも試合中に失い、相手に得点されました。
柏木のゴールに福岡に駆けつけた多くのレッズサポーターも助けられ、勇気づけられました。
前半終了間際の同点ゴールで息を吹き返し、後半から再び主導権を取り戻しました。
右サイドを平川が駆け上がり、梅崎が、達也が、柏木が、マルシオがゴールを目指しました。
セルの負傷交代とともにその機能を失っていたレッズの攻撃が再び機能するようになりました。
福岡にカウンターからチャンスを作られることもありましたが追加点は許しませんでした。
そして、その瞬間を待ち望んでいた待望の追加点も、柏木のパスから生まれました。
右からゴール前に走り込む梅崎に合わせるようなボールが左サイドの柏木から送られました。
相手DFの目の前を通過したボールが、スピードにのって走り込んだ梅崎に渡りました。
相手DFの裏に抜けGKと1対1になった梅崎を、福岡DFが後ろから引き倒しPK獲得。
引き倒した選手にはレッドカードが示され、福岡は残りの時間を10人で戦うことになります。
マルシオが蹴り直しとなったPKも、冷静に、そして確実に決めてくれました。
怖くて、恐ろしくて、まともに見ることが出来なかったPKは久しぶりでした。
その後、何度も何度も3点目を奪うチャンスを作りますがこれを決め切れず。
それでも10人となり、前半からの激しいプレスで消耗した福岡に反撃は許しませんでした。
この試合でレッズに課せられた最大の命題は勝利。確実に勝ち点3を獲ることに成功しました。
先制されるとほぼ勝ちの望めなかった今季のレッズが見事に逆転勝ちを果たしました。
翌日の試合で甲府が新潟に勝ち、レッズの残留は最終節に持ち越すことになりました。
負けても勝ち点で甲府に抜かれることはなく、得失点差が14と圧倒的にレッズが有利な状況です。
しかし、それでも浦和レッズは来季のJ1の切符を手にしたわけではありません。
2011年シーズンは最終節まで残留争いの渦中にいたというシーズンになってしまいました。
リーグ戦で、いつ勝ったのか忘れてしまったホームで、勝って自力で残留を決めて欲しいです。
堀監督、スタッフ、選手、サポーターがそれぞれやるべきことをやって2011年シーズンを終えたいです。
優勝を狙う柏が相手であっても、ホームで、自力で、残留を決めることを望んでいます。
2011年Jリーグ 第33節
アビスパ福岡 1−2(前半1−1)浦和レッズ
得点者:32分 岡本(福岡)・45+2分 柏木・63分 マルシオ
主審:家本政明
2011年11月26日(土)17:33 KO レベルファイブスタジアム 入場者:17,177人

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