壊れていくチームをただ見ているしかなかった2011年がようやく終わりました。
火中の栗を拾ってくれた堀監督を「チームを残留させた監督」にすることが出来て良かったです。
全てを賭けた福岡の勝利と引き換えにセルも達也も失い、残留をほぼ確定することができました。
優勝に王手をかけた柏を迎えたホーム最終戦、レッズには残っているものがありませんでした。
セル、達也を失った堀監督が選択したのは、ランコさんでも、マゾーラでもなく、
セルを直輝に代えただけのFW登録の選手が1人もピッチに居ないゼロトップの布陣でした。
福岡戦で全てを出し尽くした結果とはいえ、堀監督が考える1トップを担う選手がいないということ。
シーズン中に移籍してしまったエジがいたらなぁ…といない選手のことを考えてしまいました。
しかしこのゼロトップの布陣は完全に失敗でした。
しっかりとしたビジョンの下、全員が同じ絵を見てプレーが出来る熟成されたチームを、
突貫工事で作りはじめたばかりのチームが、核となる選手を欠いて崩すことは出来ませんでした。
ゴール前に攻め上がるどころか柏の守備ブロックの前でボールを回すだけで、
勝負のパスはことごとく柏守備陣に狙われ、カウンターから一気に危険な場面を作られました。
柏のレアンドロ選手がボールを持つとやりたい放題。ドリブルにもパスにも翻弄されました。
レアンドロ選手は全盛期のポンテ先生を力強くした感じかなぁ…良い選手です。
それでも優勝のプレッシャーからか柏がチャンスを外してくれていたので、
このままスコアレスで前半を終えることが出来たら、勝機もあるかと思っていたのですが…
CKの流れから相手のシュートがゴールポストに弾かれたボールが、
CKを蹴ったワグネル選手の足元に転がり、思い切りの良い弾丸シュートが突き刺さりました。
これでレッズの選手がかろうじて保っていた細い糸が切れたように見えました。
優勝を目指す柏がプレッシャーを跳ね除ける先制点を挙げ、柏の選手に血が通い始めました。
攻撃でも、守備でも、柏が圧倒しはじめ、浦和の選手はボールが足に着かない時間が続きました。
ボールに対する執着心、ボールに向かう最初の一歩が全て柏の選手が優っていました。
柏に追加点が入るまでにそんなに時間はかかりませんでした。
浦和戦に全てを賭けてきた柏と、福岡で全てを使い切った浦和には大きな差がありました。
前半は1本のシュートも撃つことが出来ず、柏の選手に追いまくられ、鋭い牙に怯えていました。
後半の頭から直輝に代えて原を投入。
これで少しは戦えるようになったという印象を持ちました。
堀監督は福岡戦を戦ったメンバーを極力代えることなく戦いたかったのだろうと思います。
そうしたときに考えたのは、セルに代えて誰をピッチに入れるかということだったのでしょう。
そしてその選手はランコさんでも、マゾーラでもなく、直輝であり、原だったのだと思います。
前半に比べるとまだ攻撃の形が見えるようになりました。
それでも3点目を先に獲られると、完全に戦意を失い大量失点の怖れも秘めていました。
レッズにとっても、柏にとっても、次の1点が大きな意味を持つものだったと自分は思います。
試合を左右する次の1点は圧倒的に劣勢だったレッズに入りました。
右サイドの平川が上げたクロスに、絶妙な位置でフリーとなった柏木が合わせて1点を返します。
1点差に詰め寄ったこの得点で、柏の選手も精神的な不安を覚えたと思います。
5万人を越えたスタジアムは沸き、これで試合は分からなくなりました。
絶対に勝利が必要な柏にとっては、点を獲ることよりも獲られる怖さを感じたと思います。
一方で失うものはなにもないレッズにとっては、負けている状況で迷いはありませんでした。
試合は一進一退。どちらにもチャンスがあるような試合展開になりました。
名古屋の結果次第では、同点に追いつけば目の前での胴上げは見ずに済むと思いました。
しかし、思わぬプレーで試合は決してしまいました。
それまで幾多のピンチを防いできた順大が、力のないミドルシュートの処理を誤り失点。
逸らしてしまうようなボールには見えなかったのですが、ボールはゴールに吸い込まれました。
柏にとっては幸運な、レッズにとっては痛恨の致命的な失点だったと思います。
この失点で事実上試合は終わってしまったという印象を持ちました。
浦和レッズのこの試合に賭ける気持ちは急速にしぼんでしまったように感じました。
再び2点差にされてしまった浦和に、柏の初優勝への勢いを止める力は残っていませんでした。
私たちのホーム埼玉スタジアムで歓喜の輪を作ったのは柏の選手たちでした。
長かったようで短かった2011年リーグ戦が終わる笛が鳴り響きました。
「レッズスタイルの次のステージ」 は全てを捨ててチームが迷走を続ける茨の道でした。
全てをリセットし、真逆のことをやり始め、迷走の果てに残ったものは何もありませんでした。
今季、自分たちは誰と戦っていたのでしょうか。“浦和の敵は浦和だった” と感じています。
柏の選手の歓喜を目の当たりにしても、悔しさを感じることはありませんでした。
ホームで優勝を決められたというのに、悔しくて悔しくてという心境にはなりませんでした。
一方で試合後に甲府の試合結果を聞いて、笑顔もなく安堵する自分がそこにはいました。
J2降格の危機を救ってくれた堀監督にはいくら感謝してもしきれないと思っています。
壊されていくチームを、ただ見ているしかなかった2011年がようやく終わりを告げました。
2011年Jリーグ 第34節
浦和レッズ1−3(前半0−2)柏レイソル
得点者:29分 ワグネル(柏)、38分 橋本(柏)、53分 柏木、76分 茨田(柏)
主審:吉田寿光
2011年12月3日(土)15:35 KO 埼玉スタジアム2002 入場者:54,441人

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