都教委が異常なまでの執念で強制しようとする「日の丸・君が代」問題とは何か?
99年2月28日、広島県教委から出された卒業式での「日の丸掲揚」「君が代斉唱」の完全実施を求める異例の職務命令と、「強制」に反対する教職員らとの板挟みになった高校校長(58)が自殺したことをきっかけに政府は、「国旗・国歌」の法制化に向けて動き出した。
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/hinomaru.htm
議論の中身は上のサイトを見ていただければと思うが、その後、東京では「異常」な事態が進行する。
2003年10月23日、都教委は校長に「通達」(=命令)を出した。
「10・23通達」
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr031023s.htm
1
学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。
2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」のとおり行うものとすること。
3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、
教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。
この通達に対しては、弁護士会も批判している。
東京都教育委員会の「国旗掲揚・国歌斉唱」の通達等についての会長声明
http://niben.jp/13data/2005data/seimei20050228.html
「命令」なので、これに逆らうと「処分」される。
実際、「職務命令違反」を問われ、「厳重注意」「戒告」「減給」などの「処分」を受けた教職員は300名を超える。中には複数回の「命令違反」により、「出勤停止1ヶ月」の処分を受けた教師も二人いる。そのうちの一人は、今年の卒業式でも不起立で、「停職3ヶ月」の処分を受けた。
今年のある都立高校定時制課程の卒業式で、生徒の大半が不起立だったことを受け、都教委は新たな通達を出した。
「3・13通達」
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060313.htm
「校長が自らの権限と責任において、
学習指導要領に基づき適正に児童・生徒を指導することを、教職員に徹底するよう通達を発出」
生徒が「起立・斉唱」しなければ、教職員、さらには校長を処分するとの命令だ。
都教委は「学習指導要領に基づいて」、各種の通達を出しているが、では要領ではどのように国旗・国歌の取り扱いについて定められているか?
学習指導要領における国旗,国歌の取扱い
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/11/09/990906f.htm
入学式や卒業式などの「特別活動」においては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するとの「指導」が定められている。
第4章 特別活動
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301/03122603/025.htm
しかし注意しなければならないのは、学習指導要領は、他の教科についても「細かく指導」していることだ。例えば:
第3節 公 民
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301/03122603/004.htm
第1款 目 標
広い視野に立って,現代の社会について主体的に考察させ,理解を深めさせるとともに,
人間としての在り方生き方についての自覚を育て,民主的,平和的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う。
第1 現代社会
1 目 標
人間の尊重と科学的な探究の精神に基づいて,広い視野に立って,現代の社会と人間についての理解を深めさせ,現代社会の基本的な問題について
主体的に考え公正に判断するとともに自ら人間としての在り方生き方について考える力の基礎を養い,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる
第2 倫理
1 目 標
人間尊重の精神に基づいて,青年期における自己形成と人間としての在り方生き方について理解と思索を深めさせるとともに,人格の形成に努める実践的意欲を高め,
生きる主体としての自己の確立を促し ,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。第3 政治・経済
1 目 標
広い視野に立って,民主主義の本質に関する理解を深めさせ,現代における政治,経済,国際関係などについて客観的に理解させるとともに,
それらに関する諸課題について主体的に考察させ,公正な判断力を養い,良識ある公民として必要な能力と態度を育てる。
ご覧になってお分かりだと思うが、「政経・倫理」などの「公民」分野では、「自分の頭で考える一つの人格」の形成を目標としている。
しかも、「国旗・国歌」が義務付けられている「特別活動」の目標は、以下のように定められている:
第1 目 標
望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り,集団や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする
自主的,実践的な態度を育てるとともに,人間としての在り方生き方についての自覚を深め,自己を生かす能力を養う。
都教委が強制しようとしている「日の丸・君が代」は、全ての学習指導要領の中の、ほんの一部分でしかない。その一部分のために、学校生活を通じて育ててきた「人格」が一瞬にして否定されてしまうのだ。その一部分を実現するために、「逆らうものは処分する」という態度で臨んでいるのだ。例えば、「政経・倫理」分野の試験の点数が悪いからといって、先生が処分されることがあるだろうか(今後ありうるかもしれないが…)。
それだけ異常なことを、都教委はやっているのだ。
(最後に)
それにしても、
今の「受験教育」が、「政経・倫理」をおろそかにする理由が、みなさんは分かったのではないか? 今回初めて該当する「学習指導要領」を読んだ人がほとんどだろうから。
何のために「勉強」するのか。「教育」とは上から押し付けるものではない。国家以前に、
一人の人間として成熟するための権利としてあるのだ、と分かったのではないだろうか。
教育基本法が「改正」されれば、間違いなくこれらの要領の内容も変えられるだろう。
国を「愛し」、国のために「死ぬ」、従順な「臣民」を作るために。それは、
「教育勅語」の精神と同じだとは思わないか?

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