マユコと話をしていて思い出したエピソードです。
フランス南部(注1)の町
モンペリエ(montpellier モンプリエと読む人も)
の蚤の市(marché aux puces マルシェ・オ・ピュス)での出来事。
当時僕は
ペルピニョン(perpignan 現地のなまりではペルピ「ニャン」。なんとなくかわいい)という町に住んでいましたが、訳あってそこにいくことになりました。
蚤の市というと、パリにあるクリニョンクール(clignancourt)などが有名ですが、地方のものも結構楽しい。ペルピニョンには約2年いましたが、日曜のお約束は蚤の市散歩でした。
ペルピニョンではいろんなものを買いました。
その中で面白くてお買い得だったのが、ほぼ新品の
郵便局(la poste ラ・ポスト)
の職員用の上着10frs(約200円)でした。学校に着て行ったりして「郵便で〜す」などと言っていました。
モンペリエの話に戻りますが、そこでたまたま
皮製の昔の郵便配達用かばんを見つけました。
「これは上着とセットであるとグレードアップする」と思った僕は、早速交渉開始。値段ははっきり覚えていませんが、僕は現金の持ち合わせがなく、
小切手帳を持っていたので、「小切手で払う」と言うと、店のおばさんは、「小切手は受け付けない」と言います。
日本人には小切手は「金持ちのもの」という印象があるでしょうが、フランス人にとっては日常の買い物や決済などに欠かせないものです。しかしただの紙切れが現金と同じ価値を持つのですから、支払いを受ける側は結構神経を使います。スーパーなどで小切手で買い物すると、必ず身分証明書の提示を要求され、小切手の裏面に証明書番号を控えられます。蚤の市などでは、顔見知りでもない限り、小切手を受け付けないのは、自己防衛手段として正しいことだと思います。
僕は仕方なく、一番近い現金引き出し機はどこかを尋ね、
往復20分ほどかけて現金を下ろしてきたのです。
その店に戻り、「お金持ってきたよ」と言うと、なんとおばさん(本当はバ○アと呼びたいところですが)は「
もう売れた」と言うのです。僕はあまりのショックにへたり込んでしまいました。
僕:「戻ってくるって言ったじゃないか」
店主:「そう言って戻ってこないやつはいっぱいいる」
僕:「現金下ろしてくるから引き出し機の場所も聞いたんじゃないか」
店主:「
いくらかでもお金を置いてから行けばよかったんだ」
このようなやり取りがありましたが、最後の発言には驚きました。「
じゃあ先にそれを言えよ」
フランス人気質を痛感した出来事でした。
(注1)南仏と言うと、ニースなどのあるコート・ダジュールやエクスなどがあるプロヴォンス(注2)を想像するので、あえてフランス南部としました。
(注2)provenceのenの音は、日本では「アン」と表記されますが、原音は「オン」に近いのです。本当はfranceだって「フロンス」の方がはるかに近い。プロヴァンスと発音すると「province=パリ以外の町の総称」と誤解されます。clignancourtも日本のガイドブックでは「クリニャンクール」と書いてます。
ただ南部の人たちは、enやanを「アン」と発音する傾向があるので、ペルピニョンについては「ペルピニャン」の方が近いと言えるでしょう。元々カタラン(カタルーニャ:バルセロナなどで話されている言葉)語ではperpinyàと書くのですし。
いずれにしろ、
外国語の発音を日本の仮名で表記すること自体に無理があります。

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