広島・長崎の思い出(8)
9日、長かった大会もようやく最終日。
モハメド・エゼルディン・アブドルモネイム(アラブ連盟事務局長特別顧問・スエズ運河大学教授、エジプト人)の「私は日本に来る前は平和活動(運動)家だったが、日本に来て平和の闘士となりました」が印象に残る。

フランス人は平和行進では使えなかった「子どもの手形の横断幕」を手に会場内を一周。
核兵器の廃絶と公正な社会づくりは違う目標のようで根っこの部分でつながっていることが理解できた(?)大会だったか。

会場が一体となったフィナーレ
会場を出ようとした時、偶然沢田昭二さんに出会った。沢田さんと言うのは物理学の専門家で、原爆症認定にかかわる放射線量に関する研究を続けられている方で、オドレーの質問(2日目参照)に答えられる最適の人だ。彼によると「私の研究では、被爆1日目の放射線量に対し、9日ごとに半減し、40日後には人体に影響の無い程度まで下がった」ということだった。
大会終了後、日本人3人、フランス人3人で食事をしながら対談の企画。会場近くに適当な場所が見つけられず苦労したが、「わっぱめし」屋を発見して店内へ。なぜかほかのフランス人がぞろぞろと付いて来たので、一時パニックに。こっちは時間がないのに面倒な仕事を増やしやがった。メニューを説明して回る。
食べながら、話を聞きながら、通訳しながら、司会進行しながら、メモを取りながら、写真を撮りながら。。。結構手一杯で、もうちょっと核心に踏み込んだ話を聞き出したかったが、それでも「草の根」の文化交流に貢献できたのではないかと思う。
この時の様子も形になっているので、そちらを見ていただきたい。ここではそこに乗せられなかった部分のみを書いてみたい。
ジュリー:私とクレールは広島でホストファミリーにお世話になりました。そこで驚いたのが、食事の時、お母さんが一緒に食べないことです。お父さんが、椅子に座ったままあれこれ指示を出し、お母さんはまったく席に着きません。
ナオコ:フランスでは男女は同権なの?
クレール:少なくとも日常の生活においては男女平等です。男性の意識の中に「男女同権」は根付いていると思う。でも、社会に出ると、重要な地位についている女性はまだまだ少ないわ。
チサ:フランス人は批判精神が強いと聞いたけど。学校で議論する機会は多いの?
クレール、ジュリー:そんなことはないわ。教師も生徒もバック(バカロレア=高校卒業資格)取得のための勉強しか頭にないわ。五年前からコレージュ(日本の中学校に相当)に「教室での生活」という科目が導入されてそこではいろんなことを議論することになっているんだけど、二週間にたった一時間だけ。議論をするのは学校外のサークルでかな。
クレール:批判することで物事が前進するという側面があるから、私はいいことだと思う。
ジュリー:フランスにはすばらしい文化や技術がいっぱいあるのに、フランス人は文句ばっかり言って、物事をいい方向に変えていこうという気があるのかしらとちょっと悲観的になってるの。
と、しっかりとフランス人らしい「批判精神」をのぞかせてくれた。
チサとナオコは帰りのバスの集合場所と時間を感違いし、あわただしくお別れ(ってこんなのは『お別れ』にもならない)。一人残ったカンカンと彼女の入っている平和サークル・ピーソウルズでの取り組みなどについて聞く。カンカンは夜にあるフランス代表団レセプションに行くつもりだったが、夜にあるというのを知らず、福岡にある親戚の家へと旅立った(あんたら、みんな予定を把握して行動してくれ)。
一人残された僕は街をぶらぶらしていると、何人かのフランス人が買い物しているところに出くわした。みんな日本的なおみやげを物色しており、そのうちの一人がどうしても浴衣をほしがっていた。しかし問題は、彼女は「ちょっと」大きめなのだ。店の人と話をし(大体なんで僕が頼まれもしないのに、そんな通訳・交渉をしなければならないのか分からないが)、とにかく着てみようということにし、試着させた。僕も店の人も「ぎりぎり何とか大丈夫かなー」と言って購入することに。そんなこんなで時間食っている間に、一緒にいた「冷たい」フランス人たちはさっさとレセプション会場に向かいやがった。
詳しい会場の場所もわからず、大体の方向に向かって歩きながら、彼女(エリーズ)と話す。ニナ以上の機関銃トークに真剣に話を聞くことをなかば放棄しながら(ちゃんとエッセンスは理解してますよ)、いろいろ考えているんだなあ、と感心する。
どうにかこうにか会場に到着し、僕は招待もされていないのに潜入し(これだけいろいろ面倒見てやったんだから、これくらいの価値はあるでしょう)、駆け付け3杯じゃないが、冷たいビールでお腹を満たす。
オドレーに会い、さきほど仕入れた質問への答を伝え感謝される。
まあ、レセプションと言うのは、飲んで食って適当にしゃべって楽しめばいい。安斎郁郎さんがいたので、「『人間講座』面白かったです」、と挨拶。すると「なかなかよかったでしょ。岩波から出てる本も評判がいいんです」とのこと。一緒に写真でも撮っておけばよかった。
レセプション後、何人かとカラオケへ。カラオケなんて行くのは何年振りだろう。みんなはほとんど英語の歌をうたい、僕は「irresistiblement」を歌ったが、フランス人のくせにほとんど誰も知らない。まあ、日本で「過大評価」されているだけかもしれないが。

なぜかゲーセンへ
みなさん満足されて帰途へつく。僕とチデムとロマンはホテルの部屋でもうちょっと飲みながらおしゃべり。テレビをつけるとNHKの戦争特集をやっていた。山口仙二氏が「敢えてこの体を見せている」との言葉を二人に伝える。

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