奇兵隊さんから提示された吉越勝之氏の論文は画期的な切り口を提示してくれた。
※当サイト記事
http://red.ap.teacup.com/sunvister/96.htmlコメント欄にリンク添付・・・・現在リンク切れ
※注意 リンク切れのため2009・8・14・参考論文リンク先変更
吉越勝之氏論文”クリントンと池田税制が高度経済成長大成功の要因”
http://book.geocities.jp/yosikosi2001/
従来のケインズの有効需要の創出政策といえば、財政出動と金融政策に限られていたが、それよりも効果的な需要創出方法として、消費税など間接税の撤廃、所得税の累進性強化による増税が、歴史的に、財政赤字なき景気浮揚効果を発揮している事実から、未発表の経済政策理論が導きだされるのではないか?という、盲点をつく問題提起をされている。
(氏は経済学者でないが、学界的な野心がないためというより、公共心が強いため、経済学会でも評価されうる論文を生み出す可能性がある発想を公開された。私よりも公を優先された氏の義侠心に敬意を表する。)
バブル崩壊以降、わが国政府はケインズ理論に基づく需要創造策として、公共事業のばらまきとしての財政出動を積み重ね、多大な借金を積み重ねてきたが、景気は浮揚しなかった。それに対するアンチテーゼとなる経済政策として、日本のアメリカ化ともいえる構造改革路線が、日本ネオコン(民主党の松下政経塾グループ、自民党内若手グループ)により提案され、今日の“小泉改革路線”の伏線となっている。
その路線は、アメリカネオコンの依拠するニューエコノミー理論
(競争を促進させる中で、経済合理性を高め、効率化された勝ち組企業の巨大化した豊富な資金力に基づいて、次々生み出される新技術開発が新市場を開発し、経済成長を牽引し、その波及効果で持続的好景気を実現していくという供給サイドに立った、景気循環の必然である不況を超克できるとする経済理論)
に依拠した路線で、不良債権処理、金融改革、税制改革、規制改革、などの竹中イズムに継承されたが、それがもたらした日本の潜在能力の破壊と半面で既得権益は温存という最悪の結果に迷走しているのは周知の通りだ。
氏はそうしたネオコン理論が、原理論的に破綻した理論であることを見抜く論点を、自然界の生態系と市場経済の同一性を提起したノーベル経済学賞受賞のソローモデルである“進化システム性”との関連で想起させてくれた。
自然界では、生存競争の自浄作用で“優勝劣敗”“自然淘汰”とともに“食物連鎖”による“調整均衡”が働く、ネオコン理論のベースもそうした自然界の掟を単純に人間社会に適応させるものであるが、実は人間が自然界の動物と違う社会性を持ち合わせており、自然原理を経済原理に適応させるために、人間社会としてのバイアスを働かせないと、方向音痴の論理整合性を呈することになってしまう。
ネオコン経済政策は限定的視野における論理整合性にこだわるあまり、自然原理活用の効率化=競争結果の極大化=減税と企業競争力の強化(企業統合の推進=マネーゲーム経済拡大、富の偏在化)という方程式を導き出し、それを実直に政策にあてはめているが、その方程式の重要な構成要素を欠落させることで、“IQが高いが、方向音痴のA君みたいに、大間抜け行為”を自信満々に提唱、実行している。
※参考 方向音痴の論理整合性1
http://red.ap.teacup.com/sunvister/92.html
ネオコン政策が見落としている点
1.人間は社会的存在であるが故に、実際の能力=競争力という公式は成り立たない。
実際の能力差が1:1.5であっても、所得差は1:1000000にもなりうる。また1:0.7であっても1:1000000にもなりうる。能力が低いものの方が生き残る非合理性の推進にもなりうる。
実際、人間の能力差=再生産価値差は最大でも、10倍以下でないだろうか?
2.自然界において、ライオンは満腹になれば捕食活動をやめ、食物連鎖を破壊することがないが、業深い人間は“無限大な食いしん坊”な存在になりうる。
自然界の食物連鎖の頂点にいるライオンの生理的限界が、食物連鎖の維持=既存生物の共存共栄状態を担保している。しかし、もしライオンが、バカで食いしん坊の業深い人間みたいな存在なら、餌を食いつくし、結果的に自ら飢え死にすると共に、生態系バランスを破壊する。
他にも盲点はあるが、この二点だけでも、“自然の掟を大威張りで実行しているつもり”のネオコンの政策が、実は自然法則と正反対のことを積極的に推進していることを露呈させている。
古典派経済学の均衡モデル、拡大モデルは、社会的バイアスという必然性を有する人間の本来的性質を、計算式から除外することで自己完結させられた条件限定の仮想モデルだ。当然経済政策論は、その弱点を補い、本来の自浄作用を担保しよう追求する意味で、再編成され続けなければいけない。そのベクトルをもつケインズ理論はニューデール的な財政政策論としては破綻したが、発想の根底にある有効需要創出の原理まで否定されたわけではない。
累進課税という、より本来的な能力に見合う所得配分を実現し、市場経済の調整原理、自浄作用を活性化させるという政策は、実際の人間の市場活動を生態系の均衡モデルに近づけ、妥当性のある自然な富の再配分効果を促進させれば、有効需要の持続的拡大=経済成長のエンジンになるという原理は有効性をもつと思う。
実は戦後日本の奇跡的成長は、この税の累進性が、有効需要創出に結びつく妥当な富の再配分機能として機能することによって実現された可能性が高い。日本企業は世界でも特異な給与体系をもっており、経営者と従業員の所得差はせいぜい1:10の範囲におさまっていたが、税圧力が企業の労務政策の自然法則妥当性を誘導したのだと思う。
“税で払うのなら、貢献してくれた従業員に還元しよう”
これが、“竹中大臣が国際競争力阻害条件として親の敵のように問題視している日本労働者の高給与体質”を作った要因となるわけだが、実はこれが日本の高度な消費市場の拡大に貢献し、有効需要の持続的拡大のエンジンとなった。
さらに特筆すべきは、経営戦略としてコストダウンという価格競争力より、商品差別化による競争力創出という高度な競争力政策を企業に選択させ、結果的に“品質においてずば抜けた国際競争力”を持続的に創出するエンジンになってきたことだ。
さらに道徳的には、欲張りであるより、共同体へ貢献できる名誉を選ぶ人間を育て、結果的に“自利利他”で回りまわって自分も豊かになれるという哲学を体得してきた。
“モラルが高いものつくり日本”の経済原理的要因は、企業活動の非価格競争性向を強める、富の再配分圧力を強めた税制にも起因すると思う。
※もっとも、高税率は土地所有、株式保有による資産保有性向も高めたが、資産税徴収の強化も同時に行っていたら、土地、株バブルも生まず、日本の市場規模と商品開発力はさらに強化されていたんじゃないかと思う。
以上は世間で言われていることと全く逆の論考で、大胆すぎてついてこれない人がいるかもしれないが、固定観念がつくる思考の硬直化をなくして、反論の余地がない“有効需要原理論”、“生態系進化システム論”と、過去市場で起きた現象との関連で仮説を立てると、すっきりと収まりがいい法則が浮かび上がってくる。
日本政府の政策担当者が、財政政策の成果と思っていた経済成長だが、実は日本特有の富の再配分システムと、商品開発圧力によって牽引されたものである可能性も大きい。
そうして考えると竹中大臣など日本のネオコンは、幅広いトータルな視野に基づく立体的な構造理解でなく、競争力=コストダウン、能力主義=高額所得者創出、競争原理=無限大の報酬を求める食いしん坊合戦というように、切断された方程式で道を誤り、結果的に“自然原理に反するとんでもない政策”を推進してきたということがはっきりしてくる。
彼らが実際に推進してきたのは、最高税率の大幅な引き下げによる、実質能力=再生産価値以上の富の偏在性向の極大化、資本巨大化による自然競争原理の阻害=社会権力バイアスの極大化と、規制緩和によるマネーゲーム流動資本拡大=富の空虚化だが、それらはすべて富の循環阻害=有効需要喪失=国内市場のデフレ再生産という結果に結びついている。
彼らネオコンは“大金持ちになれる夢を与えれば、やる気が刺激され経済成長の推進力になる”という単純な固定観念にとらわれているみたいだが、それは大きな間違いである。
“そんなバカみたいに食いしん坊のライオンは自然界にいませんから!人間界でも、あんたらみたいな食いしん坊は天然記念物ですから!!!残念!!!” といってやりたいくらいだ。
こうして国内市場の縮小均衡要因をせっせと積み上げれば、必然的に活路を海外からの富の流入に頼らざる得なくなるのは当然の結果だと思う。
だが、そのための海外進出を促進する海外企業非課税政策は、日本資本の海外流出を促進させる一方だ。また、投資呼び込みの外資優遇策も、1:2の不利な株式交換比率(バブル効果)で結果的に既存資産の海外流出を促進させる。さらに、国内の高度な生産能力を持つ企業社員の労働分配率を低下させる“食いしん坊経営者”の増殖で、国内市場はさらなる縮小に追い込まれるという悪循環に突入する。
なんか第二次大戦前の日本経済と同じ道をすすむようで暗然とするが、それを逃れようとアメリカの二番煎じで、発展途上国相手に金融収奪による海外からの富の補填を必然化させれば、反日感情を拡大再生産することになりかねない。
原点に立ち戻り、偶然の産物かどうか、自然の摂理にかなう富の循環により安定した経済成長を確保していた過去の日本の経済循環モデルを再評価し、その有効原理を政治的に再生させる経済政策の再構築をすべきだと思う。
彼らネオコンが、ただの方向音痴でなく、自らの政策の経済原理的誤りを知りながら、私欲のためにわざと売国的目的意識性で逆張りの政策を推進しているのなら、議論によってではなく、政治的に抹殺する対象として、情報包囲殲滅戦を執拗に展開するしかない、、、、、。
ネオコン勢力を抱える当該政党の政治家には、彼らの提示する議論の非妥当性について再検証してもらいたい。
そして税圧力に牽引された日本型経営、市場経済が育てた循環性向と商品差別化性向が、自然の摂理に適うよう絶妙なレギュラシオンが効いた結果生まれたシステムだったという、実に運命的な事実を、純白な意識で再評価してもらいたい。
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