すごい話をテレビで聞いて驚いた。5日の衆院平和安全法制特別委員会で中谷元・防衛相は「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけば良いのかという議論を踏まえて、閣議決定した」と言った。憲法が先なのではなく、法案が先にあるのだ。憲法が上ではなく、法案が上なのだ。そういう本音を漏らした。
言うまでもなく、現行憲法はアメリカによる押しつけ憲法である。だから、アメリカとしては自分たちの都合で日本国憲法なんぞ無視しろと日本に要求するのだ。日本の国家主権よりも、アメリカの利益が上にあるのだ。アメリカとしては当然それを利用しようとする。
だが、歴代の自民党政府はその本質を理解しながらも、アメリカの要求を撥ねつけるために憲法九条をはじめとする日本国憲法を利用してきた。辛うじて、日本の国家主権を曲がりなりにも維持出来てきたのは、血で贖われた日本国憲法があり、曲がりなりにも「民主主義の盟主」を自認するアメリカとてもそれを無視できなかったからだ。
そういう建前を、日本の安倍内閣は崩壊させようとしている。ここで判断が難しい話がある。確かに、安倍内閣のやっていることは対米従属に見える。しかし、安倍内閣とてもアメリカはアメリカの利益に基づいてコトを行なっていることを知らないわけではない。例えばTPPの交渉においては、日本側は頑張っている。対ロ外交では日本独自の行為にアメリカは懸念を表明した。むしろ、憲法九条の制約(幻想)を日本に守らせられないアメリカは、没落の過程にあることを正確に見抜いているのかも知れない。日本は日本を独自で守らなければならない時代に入っていることを認識しているのかも知れない。
にしても。現在の内閣は悪手を取っていると思う。時の情勢に応じて、憲法をはじめとする日本国の文言を、内閣はいかようにも解釈していい(現在議論されている安全保障関連法案についてもそうだ)ということにしようとしている。これでは、憲法や法律があったところで、「日本国の憲法も法律も、それは信用してはならない」という話にしかならない。これは、憲法や法律はおろか、日本国を侮辱しているのではないだろうか。
改憲するなら、改憲するでいい。筋道を通さないと、国家の正統性が失われる。隠遁姑息のツケは大きなものになるだろう。

4