マルクス主義的には、労働者が生み出す価値が、労働者の再生産に必要な価値(賃金)を超える部分がこれに当たる。で、マルクス主義者的には、これが「全て」だと。
だが、世の中を見ると、どうもそれは「違う」んじゃないかと気づく。いや、決して間違いではないんだが。
例えば、トヨタは物凄い利益を上げている。彼らの会社(本社)だけに極限して金の流れを追えば、8時間労働のうち、3時間弱だけ賃金として支払われている、すなわち、搾取率(v/m)は8/3=約270%となる。だけど、彼らの賃金は世間相場から見れば物凄く高いんだよね。
方や、事故を起こしたあずみ野観光。家族経営。報道されることから見れば、この手の会社ってのは、物凄い殺人的労働を孕みながらも、同時に利益が上がっていないらしい。これは、売り上げに対して経費がかさみ、トントンかそれ以下になるためである。
搾取率は0近傍かマイナスだ。
かつては観光業界ってのは花形産業の一つであり、バス事業に携わる者も結構な高賃金だった。これが崩れたのは、競争原理が貫徹し出した90年代からである。(長距離バスの低運賃もこの頃からだったと記憶)
世の中を見れば、基本的には規制のない業界=競争原理が貫徹する業界ほど、儲けが少なく、賃金も低い。また、競争原理で価格のぶっ叩き合いがおきると、業界そのものが
沈没する。これは、業界そのものが顧客(個人であれ、法人であれ、行政であれ)に搾取されていると言えるのではないか?
一方、トヨタの大儲けは、彼らの生産における努力による業界での相対優位を保持していることもあるが(大野耐一氏を起点に発展したカンバン生産方式は大したものである)、関係取引会社や下請けに対して見られる「勇者は語らず」的な取引を通じた搾取があるのだ。デンソーのような物凄い勇者を生み出しもしているが・・・。
搾取論は、雇用・被雇用の関係だけで見ては現実を説明できない。
まあ、S・アミン理論においては第三世界と先進国における不等価交換について述べられているわけだが、この理論はもっと広く敷衍されるべきなんだろうな。日本共産党はやっていそうだけど。(雑誌「経済」は最近読んでいないんだよなあ)

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